研究実績の概要 |
中低所得国における対外的な起債通貨の選択とマクロ経済環境の関係等に関する実証分析をデザインし、主に世界銀行や国際通貨基金等から債務・マクロ経済データを、Powell and Thyne (2011)から政治の安定度に関するデータを収集・整理し、計量分析を開始した。 これまでの暫定的分析結果から、過去40年余りにわたる非先進国の対外債務の起債通貨ポートフォリオの特徴は、先行研究でしばしば指摘されてきた外貨建て債務シェアの増加だけにとどまるものではなく、ポートフォリオ分散水準の低下(つまり通貨ポートフォリオの集中)を伴うものであることが分かった。リスク回避の観点から経済学理論が提唱するポートフォリオの分散とは反対に、実際には通貨ポートフォリオの集中が進んでいる事実は、途上国の債務問題を表向きよりも更に根深いものにしていると考えられる。これらの暫定的分析結果を取りまとめて、ワーキングペーパーを発行すべく執筆を進めている。 2019年7月に滋賀大学経済学部付属リスク研究センターより国際経済学セミナーへの招待を受け、ワーキングペーパーの草稿を報告した。同12月には香港市城大学主催のConference on “Exchange Rates and Macroeconomic Policies: Recent Developments”において報告予定であったが、残念ながら現地の情勢不安により開催中止となった。
Powell, Jonathan M. and Clayton L. Thyne. 2011. Global instances of coups from 1950 to 2010: A new dataset. Journal of Peace Research,48, 249-259.
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