研究課題/領域番号 |
18K01715
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
藤井 英次 関西学院大学, 経済学部, 教授 (20321961)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 対外債務 / 原罪 / 消費のボラティリティ |
研究実績の概要 |
中・低所得国における対外債務の起債通貨選択と、マクロ経済環境や家計の消費行動との関係を解明するための計量分析を行った。世界銀行の債務データベースや国際通貨基金の国際金融データ等を用いて詳細な検証を行った結果、1980年以降中・低所得国が海外から借り入れを行うに当たっての起債通貨の構成は、経済学理論がリスク回避の観点から広く提唱している通貨ポートフォリオの分散行動とは整合性を持たず、むしろ反対に対外債務のポートフォリオを特定の通貨に集中させる傾向が多くの国に関して観察された。 このような対外債務の通貨ポートフォリオの集中が有する経済厚生上の効果を検証するため、一般的に使用されている貿易ベースの実効為替レートに代えて、対外債務ベースの実効為替レートのデータを構築し、景気循環との関係を示すdebt-based effective exchange rate cyclicalityの推定を行った。更にその推定結果を用いて、通貨ポートフォリオの集中・分散が対外債務ベース実効為替レートのcyclicalityを介して、所得変動に直面する家計の最終消費にどのような影響を及ぼすかについて計量分析を行った。 暫定的な分析結果からは、他の条件が一定の下で対外債務通貨ポートフォリオの集中は債務ベース実効為替レートの変動をよりpro-cyclical(従景気循環傾向)にし、pro-cyclicalityの強化は、所得の変動に見舞われた家計の最終消費のボラティリティを増幅する有意な影響を持つことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
参加を予定していた国外のワークショップや研究交流が新型コロナウイルス感染症の影響で相次いで中止されたこともあって、海外の専門家・研究者からフィードバックを受けながら分析結果を査読付きの出版物に昇華させるプロセスにおいて当初の計画よりも多少時間を要している。
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今後の研究の推進方策 |
現在分析方法の見直しや論文におけるプレゼンテーションの改善を進めており、新たにワーキング・ペーパーを執筆したうえで国際学術誌への投稿を行い、査読プロセスを経る事で内容の充実を図る計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
ワークショップや研究交流等、当初は複数の海外出張を計画していたが、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて全て中止となったため。感染症の流行や情勢不安も続いていることから次年度についても状況は流動的ではあるが、可能であれば研究交流実施のため海外出張を行う。また、分析の改良や論文の改定・執筆作業は続いており、それらに伴って必要な経費を使用する計画である。
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