研究課題/領域番号 |
18K01782
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研究機関 | 麗澤大学 |
研究代表者 |
寺本 佳苗 麗澤大学, 経済学部, 准教授 (50610341)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 企業倫理 / サプライチェーン / 制度 / 社会的課題 |
研究実績の概要 |
サプライヤーの人権問題は、分業が進みグローバルに広がった取引関係を有するほとんどの業界が抱える共通の課題である。しかし、サプライチェーンのデューディリジェンスを委託される専門業者であっても、取引先を末端まで正確に把握してリスクを洗い出すことは不可能に近く、企業の悩みの種である(ヒアリングより)。社会的課題としてサプライチェーンに焦点を当て、制度の生成と影響に関する実証的研究を進めている。 2015年に国連でSDGsが採択されてから、GCNJ(グローバルコンパクトネットワークジャパン)に参加する企業が格段に増えている。国連GC(グローバルコンパクト)とは、各企業・団体が持続可能な成長のために、人権、労働、環境、腐敗防止などに取り組むための集まりである。GCの日本における組織であるGCNJに加盟する各企業・団体のメンバーは、GCNJ内にある分科会に参加して活動を進める。分科会の一つに2008年に立ち上がったサプライチェーン分科会がある。筆者は2019年よりサプライチェーン分科会の参与観察と関係するメンバーへのヒアリングを行っている。 サプライチェーン分科会の特徴の一つは、メンバーが仕事を通じて抱えるサプライチェーンの課題に取り組むために、自ら制度設計・公開していることである。自分たちの課題を解決するための制度が、少しずつ広がり始めている。また、メンバーは企業だけではなく、NGOや専門家など異なる背景を持つメンバーがおり、互いに持てる知識を共有している。メンバー同士は弱いつながりを持つメンバーと強いつながりを持つメンバーが共存している。強いつながりを持つメンバーになる過程で問題意識が伝播することが確認できた。また、サプライチェーン分科会と異種組織との連携を模索する動きも観察でき、影響を及ぼす範囲がさらに変化していくと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究を進めるための柱は、(1)先行研究と(2)調査である。 (1)先行研究について サプライチェーンの人権問題を考察するにあたり、いくつかの研究領域にまたがっている。企業倫理、新制度派組織論、組織間関係であるが、これらのレビューは進めてきた。また、サプライチェーン分科会における制度を生み出す力となっているメンバー間の関係や役割については、社会資本とソーシャルネットワーク理論から説明できるため、この点についてのレビューを進めている。 (2)調査について 本研究で注目してきたサプライチェーンの人権問題対応においてはGCNJサプライチェーン分科会をフィールドに研究を進めている。参与観察とヒアリングがおおむね順調に進んでいる。また、サプライチェーンにおける人権問題対応は電子業界でいち早く進んだため、電子業界の方々へのヒアリングも並行して行っている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究を進めるために、先行研究と調査を引き続き行い、成果をまとめていく。 サプライチェーンの人権問題への複数組織の協力した取り組みについて研究している。組織の連携については組織間関係、協力した取り組みが生み出す制度については新制度派組織論、協力するプラットフォームになっているGCNJのサプライチェーン分科会を継続して調査し、社会資本理論とソーシャルネットワーク理論から説明できるものと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
出張計画が変更になったためである。今年度の国際学会発表、定性調査分析ソフトの購入を予定している。
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