研究課題/領域番号 |
18K01801
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
宮下 さおり 名古屋市立大学, 大学院人間文化研究科, 准教授 (30447586)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 中小企業 / 自営業 / ジェンダー / 社会運動 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、中小企業政策が経営者とその家族をいかに組織し、中小企業経営に影響を与えたのかについて、ジェンダーの視角から歴史実証的な分析をふかめるものである。ジェンダー公正な中小企業経営は、グローバルな政策課題である。そのための基礎作業として、歴史を振り返り、その構造をさぐる研究がかかせない。本年度はこのために関連資料の読破と整理、各種中小企業団体の特徴の理解につとめた。 日本の中小企業政策は、中小企業団体の組織化の過程で、経営者本人のみならず家族の組織化もうながすこととなった。その具体的なありようを、各地の地域資料や商工団体資料等によって確認した。そこから明らかになったことは以下の点である。 一つ目に、当初想定していた法制化された地域経済団体(商工会議所、商工会)に関しては、婦人部の活動に関して、活動資金と諸準備に関して親会のそうとうな援助があり、他の婦人団体と異なる場合があったことである。このことの解釈や事例の位置づけにはさらなる資料発掘が必要であるが、組織の特徴を示す史料を発掘できた。二つ目の成果として、当初想定していた地域経済団体(商工会議所、商工会等)の役割という課題設定をこえる課題を確認できたことである。すなわち、中小企業税制は事業主家族内部の報酬配分にダイレクトな影響力を持ち、それに対して小規模企業経営者団体が独自の主張と運動を行ってきた具体的過程についての史料を入手できた。三つ目に、日本における女性家族従業者の組織の特徴を明確にするため、海外における中小企業者の動きに関して特にヨーロッパの資料の所在の把握につとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度の成果の一部は、小規模企業における女性家族従業者の報酬に関する学会発表を行って知見を公表し、多方面から助言を得、論文を執筆して今後の研究のポイントを明確化することができた(拙著「小規模企業における家族への労働報酬―事業主の妻に着目して―」『労働社会学会年報』第30号、2019年(掲載決定))。ただし史料の発掘と読み込みに時間がかかり、初年度におこなう予定であった運動関係者への聞き取りは、次年度以降の課題となった。ただし初年度に時間をかけたことにより、十分な資料的な裏づけができることは強みでもある。また、海外における商工業者及びその女性組織に関する資料の入手も、引き続きの課題となる。
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今後の研究の推進方策 |
ただし初年度の資料調査により、聞き取りのポイントがより明確化している。これをもとに、主要な団体への聞き取り調査を行っていく。また、海外資料については、関連する専門家の範囲を広げて助言をえることにより、情報入手につとめていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
聞き取り調査の実施が次年度となったことに伴い、旅費及び謝金等を繰り越すこととなった。
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