研究課題/領域番号 |
18K01875
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
ウィラワン ドニ・ダハナ 大阪大学, 経済学研究科, 教授 (90432426)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | マルチ・チャネル・マーケティング / 顧客生涯価値 / セグメンテーション / 潜在クラスモデル / ライフスタイル / オンライン店舗 |
研究実績の概要 |
平成30年度では、「研究実施計画」に記載したとおりマルチ・チャネル・マーケティングについて先行研究によって明らかになったことや最新の研究動向を把握するために丹念に文献レビューを行った。文献レビューよりこれまでの研究で得られた知見の体系化を行い、今後の研究課題を整理した。また、文献レビューに加え、国内外の学会に出席し最新の研究動向に関する情報を収集するとともに当該分野における専門家と意見交換も行った。さらに、この分野で長年研究を行ってきた研究者と議論を重ね、国際共同研究の可能性を模索した。これまでの文献レビューや専門家との意見交換から、複数の購買チャネルで購買を行う消費者は単一チャネルで購買を行う消費者に比べ異なる購買特性を持っていることが明らかになっている。具体的に、単一チャネル消費者よりもマルチ・チャネル消費者の方が購買頻度および購買金額が高く、また店舗ロイヤルティが高い、つまり高い顧客生涯価値をもっているということである。
しかしながら、購買チャネルの利用によってなぜ顧客の購買行動または価値が異なるのか、その理由は必ずしも明確になっているとは言えない。とりわけ、利用するチャネルによって顧客価値がなぜ異なるのか、その違いがどのような要因によって説明できるのか、明らかにする必要がある。そこで、平成30年度では、オンライン店舗に焦点を当て、顧客の生涯価値が行動的特性と社会心理学特性(ライフスタイル)によってどの程度説明できるか探索的な研究を行った。購買データを用いた分析の結果、購入タイミング、ブランド認識、モバイル端末の利用といった購買特性が顧客価値に正の相関を持っていることが分かった。また、自己実現、価値観、社会的活動といったライフスタイルによって顧客の生涯価値が変わることも確認された。これらの研究成果は二本の論文にまとめられ、国際学術誌に掲載が確定している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度で行った文献レビューおよび専門家との意見交換により、先行研究で明らかになったマルチ・チャネルにおけるあらゆる現象を整理することができ、これからの研究課題をまとめることが出来たと言える。さらに、当該テーマについて海外研究者と共同研究を計画し、マルチ・チャネルにおける消費者のサイコグラフィックがどのような役割をもっているかを明らかにすることを目的とする調査の準備も整いつつある。さらに、消費者の購買データの入手を目的に、マルチ・チャネル・マーケティングを行っている複数の企業にアプローチを行っている。消費者の購買データは複数チャネルにおける実際の消費者行動の解明に不可欠である。研究実績の概要で述べたように、昨年度では研究成果を二本の論文にまとめ、両方とも国際学術誌に採択された。オンライン店舗における購買特性と顧客生涯価値の関係を明にした論文はElectronic Commerce Research and Applications誌に採択され、平成30年1月に出版された。また、オンライン店舗におけるライフスタイルと顧客生涯価値の関係を明らかにした論文はJournal of Business Researchに採択され、令和元年6月に刊行される予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度では,購買行動に対するチャネル利用行動の影響がどのような要因によって影響されるかの解明に取り組む。作業プロセスは前年度と同様に、文献レビューから始まり、仮説構築、モデル構築、実証分析、そして成果報告という手順で行う。このテーマについては、マーケティング・サイエンスの分野でたくさんの研究成果が蓄積されているため、これらの研究成果を基に定量モデルを構築する。そして、初年度に用いるデータに加え、デモグラフィックやサイコグラフィックのデータも利用してモデルを構築し、それらの影響を測定し推定を行う。最終的に、どのような要素がどれだけ顧客価値に影響するかを明らかにすることを目指す。この段階で得られる成果を国内外の関連諸学会で報告するとともに当該分野の専門家からの意見を取り入れて研究成果の有用性を高めたいと考える。
最終年度では、マルチ・チャネル環境にけるマーケティング活動の効果に関する研究に着手する。ここでは、価格やプロモーションなどがチャネル利用行動にどのような影響を与えるか、またマーケティング活動によってマルチ・チャネル顧客の購買行動がどのように変化するか実証研究を行う。作業プロセスは前年度と同様に、文献レビュー、仮説の構築、モデルの構築、実証分析という順に進める予定である。最後に、これらの研究成果を論文にまとめ、水準の高い学術誌に投稿および掲載を目指す。
|