研究課題/領域番号 |
18K01879
|
研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
閔 庚ヒョン 香川大学, 地域マネジメント研究科, 教授 (40508206)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 店頭広告 / 店頭エンゲージメント / 媒体エンゲージメント |
研究実績の概要 |
本研究では、店内における消費者の広告及びブランドへの態度に影響を与える店頭広告の誘因効果に関して、既存に提示されている店頭広告の効果測定モデルに依拠しつつ、店頭コミュニケーションにおける識別手段としてエンゲージメントという概念を採用し、店頭におけるエンゲージメントの効果測定方法を明らかにすることを目的としている。 今年度は次年度以降実施予定の調査及び実験に向けて必要機材の確保及び先行研究の関連情報に基づき、調査及び実験設計の再検討と補完作業を行った。その準備作業の一環として本年度は、店頭コミュニケーションに関する先行研究に基づき、店頭におけるエンゲージメントの定義につながる概念を整理するとともに、店頭広告が設置された店舗を利用している都内在住の10代から60代の消費者400名を対象に事前調査を行った。本調査では、購買行動における一般的認知欲求及び購買傾向に加え、店頭広告の接触及び情報処理の形態と各種エンゲージメントに対する選好水準、そして広告受容体系における阻害要因の水準との関連性が明らかとなった。まず、一般的認知欲求及び購買傾向は、主に店頭広告の媒体エンゲージメントと広告メッセージの探索水準と有意に関連していることが確認された。なお、店頭広告に関連する各種エンゲージメントの水準は店頭広告との接触形態及び接触後の情報処理の水準と統計的に有意な関連性を持っており、当該経路において「広告回避」及び「知覚された侵入性」が広告受容に対する阻害要因として調整的役割を果たしていることが確認された。以上の分析結果を通じて、媒体及び広告エンゲージメントを採用した店頭広告の効果測定体系の妥当性が見出された。 次年度はより細分化された媒体を用いた調査を実施し、各種エンゲージメントが店頭コミュニケーションにおいて果たす役割に関する総合的な結論を、本年度の分析結果と合わせた形で報告する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度実施した事前調査の分析結果により、店頭コミュニケーションにおける媒体及び広告エンゲージメントと、広告認知や態度及び成果行動からなる広告受容水準との関係が顕在化されたことで、本研究で想定される店頭広告の効果測定体系の妥当性が検証された。まず、本研究では店頭における媒体及び広告とのエンゲージメントを、広告に関連する周辺情報により強化され特定の広告とブランド対する肯定的経験に収斂される予測的期待の総和であると定義していた。本年度は先行研究に基づき、このような定義の理論的妥当性をより詳しく検討するとともに、その後実施したアンケート調査を通じて、各種エンゲージメントが店頭広告に関連する後続効果の水準といかに関連しているかを明らかにすることで、各種エンゲージメントを成果行動により得られるであろう、総体的な便益の連想につながる予測的期待値として想定した店頭広告の効果測定体系を見出すことができた。また、店頭広告の受容過程において調整的役割を果たすと予測していた「広告回避」と「知覚された侵入性」が、店頭広告への知覚水準と、広告に対する信頼性と選好度評価からなる理解度と受容度に基づいた全体的態度の水準と関連していることが検証された。 本年度の事前調査は、次年度以降実施予定の調査及び模擬店舗実験の設計上において重要な理論的根拠となるものとして想定した調査であり、その分析結果は次年度以降実施予定の調査及び実験で想定される検証経路の有意性を十分に裏付けるものとなっている。その意味で当初の研究計画と照合すると、現時点における本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度以降は、本年度実施した事前調査の分析結果を基に、以下の2点の問題に焦点を当て、店頭エンゲージメントの測定方法及びその精度を向上させるための検証を行う予定である。 1.店頭エンゲージメントと各種媒体エンゲージメントとの相互効果 特定の店頭広告が当該情報処理過程への移行を促すだけの知覚水準になっているか否か、さらにそのような広告認知の水準が当該広告の誘因効果に反映されているか否かの問題に加え、その他の各種媒体エンゲージメントが店頭エンゲージメントといかに関連しているかという問題に注目しつつ、店頭媒体に露出されるまでの過程における各種媒体の接触実態及び経路に関する調査を実施し、店頭エンゲージメントの測定方法及びその精度を向上させるための検証を行う予定である。その際、広告に対する受容と回避という二つの排他的局面からなる広告認知水準の測定精度を向上させるために、入店から退店までの過程を経験単位別に細分化した上で、各単位における物理的な広告回避要因の影響を識別する予定である。 2.広告情報と周辺情報の相互効果及び誘因間の相対的優劣関係 店頭広告と共にインプットされた周辺情報が店頭エンゲージメント及び広告情報の誘因効果にいかなる影響を与えるかという問題を究明するべく、単一カテゴリーを評価対象とした模擬店頭実験を行う予定である。誘因効果については、誘因操作の対象となる周辺情報を店頭広告の提示情報と一致するものと相互対照的形態となるものに分類した上で被験者に順次与え、各条件における不一致(±)形態が広告認知と広告及びブランド態度、そして成果行動の水準といかに関連しているかを複数項目からなる設問により測定する。なお、店頭媒体とその先行媒体との合成エンゲージメントを用いて変数全体のパス解析を行うことで、当該モデル全体の適合度に関する判定・検証を行う予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、年度後半に実施したアンケート調査をウェブ上で実施することで実査にかかる費用が節約され、当初想定していた額を若干下回ったことにある。次年度使用額として残った研究費は次年度の研究費と合わせ、模擬店舗を想定したアンケート調査に参加する回答者のリクルート費用や回答者及び協力者への謝金に割り当てる予定である。なお、その他に、研究に関連する参考書籍の購入にも一定額を割り当てる予定である。
|