研究課題/領域番号 |
18K01879
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
閔 庚ヒョン 香川大学, 地域マネジメント研究科, 教授 (40508206)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 媒体及び広告エンゲージメント / 店頭広告効果 / 店舗特性 |
研究実績の概要 |
本研究では、店頭広告の誘因効果に関して、既存に提示されている店頭広告の効果測定モデルに依拠しつつ、店内コミュニケーションにおける識別手段としてエンゲージメントという概念を採用し、特定の購買関連期待値がエンゲージメントを介し最終的な成果行動へ移行される補完・代替的経路をより精巧に規定することで、店頭におけるエンゲージメントの効果測定方法を明らかにすることを目的としている。本年度は、本来実施予定であった店舗実験の設計を再整理し、その検証モデルの設定及び実験設計を行うことで、店舗実験に向けた準備作業を進めた。しかし、店舗における実験調査については、新型コロナウィルス感染症の影響により実施が困難となり、今後の実施環境の改善も不透明であったため、実験フィールドを実店舗からシナリオ法に基づいた模擬店舗での実験に変換し、事業期間再延長申請を行うことで次年度に実施することにした。そこで本年度の後半では、模擬店舗実験における課題点に基づき、全体的な調査設計の見直しを行った。店内コミュニケーション効果の評価では、アイポイントカメラを用いて収集されるデータのうち、分析対象を店頭広告の範囲内での注視・停留・移動時間に限定し、定性データとの関連性に関する分析ができるように設計の変更を行った。また、本実験調査は諸与件を単純化させた模擬店舗で行う予定であり、実店舗との相違を最初限に抑える必要があるため、様々な露出環境を想定しつつインプットされた広告情報とオーディエンスの個別特性との適合性の問題に注目し、広告商品に関する知識水準と購入経験から構成される合成概念を評価全般の相対的水準を識別するための分類装置として採用することにした。次年度は、本年度実施予定であった店舗実験を模擬店舗における実験調査に代替し実施することで、広告情報と周辺情報の相互効果及び誘因間の相対的優劣関係に関する検証を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度までの研究では、実店舗での実験を想定し、実験設計及び検証モデルの点検・修正作業を行った。本年度は、新型コロナウィルス感染症の影響を考慮し、実験フィールドを実店舗から模擬店舗に変え、実験の設計や測定・検証モデル全体の外的妥当性を確保するための点検・補完作業を再度行った。まず、実験フィールドを実店舗から模擬店舗に変更したため、評価対象となる商品カテゴリーを限定させ、商品に対する選好水準や規範・価格等の行動統制要因に比較的影響されず当該カテゴリーに関する知識水準が一定に維持されるいった基準で選定を行った。また、主たる分析対象を広告に対する初期評価と店舗特性に対する知覚水準によるコミュニケーション効果に限定した上で、当該広告への注視度との関係に焦点を当てつつ、オーディエンスの関与水準の相違が店頭広告の初期評価とコミュニケーション効果の相違をいかに牽引するかという問題を究明することにした。実験フィールドの変更により新たな課題や制約条件が増えているが、アイポイントカメラを用いることで、オーディエンスの探索過程における広告及び商品に対する注視度を定量的に測定することができれば、店頭広告の効果測定の精度の確保に貢献できる知見が得られると考えられる。最終的な検証作業である実験調査は新型コロナウィルスの感染リスクを考慮し次年度へ再延長されたものの、本年度の点検・修正作業により模擬店舗実験に向けた検証モデルや測定項目及び実験工程など、調査設計の詳細が確定するとともに、実験調査の実査レベルに関連する準備作業及び実施後の分析フレームを明確に規定することができた。 このように、次年度実施に向けた準備は完了しているものの、事業期間延長分の店舗実験は実施できず、模擬店舗実験に代替し次年度へ再度延長したため、当初の研究計画と照合すると、現時点における本研究はやや遅れていると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度の推進計画は、基本的には本年度実施予定であった実店舗での実験と同様のものになっている。次年度は、本年度新たに設計した模擬店舗実験における検証モデル及び調査工程の点検・補完作業の結果を基に、以下の問題に焦点を当て実験を行う予定である。なお、最終的な考察範囲を「環境情報及び各種エンゲージメントの精巧化」「広告と環境情報との相互効果」へ拡張させており、後続効果における同化的・対照的傾向を強化もしくは緩和させる方法論的観点をより精巧に規定するための検証を行う予定である。 1.環境情報と各種エンゲージメントの相互効果及び誘因間の相対的優劣関係:インプットされた環境情報が広告情報の誘因効果の水準を代替するものになるかという問題に加え、複数の店頭広告からなる混合条件における両者間の相対的優劣関係を究明するべく、単一カテゴリーを評価対象とした実験調査を行う予定である。 2.誘因効果の測定:誘因操作の対象となる環境情報を店頭広告の提示情報と一致するものと相互対照的形態となるものに分類した上で回答者に順次与え、各条件における不一致(±)形態が広告認知と広告及びブランド態度、成果行動の水準といかに関連しているかを測定する。その際、各種エンゲージメント水準の差を顕在化させるために、操作対象となる環境情報を「広告との不完全一致条件」と「不完全不一致条件」とで水準調整を行う。なお、回答者には購買状況に関するシナリオを事前に与え、実験調査中生じ得るフィールドとの誤差を最小化するための条件を随所に設定することで、検証モデル全体の精度を向上させる予定である。 本調査は、本年度実施する予定であったが、新型コロナウィルスの影響を考慮し、実験フィールドを実店舗から模擬店舗に修正し、事業期間再延長申請を通じて次年度に行うことになっている。状況よっては、Webでの実験に代替することも想定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、本年度実施した実験調査を新型コロナウィルスの影響を考慮し、模擬店舗実験に修正した上で次年度に再延長しため、実査費として計上されていた研究費を使用していないことにある。事業期間再延長により次年度に移行された研究費は、模擬店舗を想定した実験調査に参加する回答者のリクルート費用や回答者及び協力者への謝金、必要基材の購入に割り当てる予定である。なお、その他に、研究に関連する参考書籍の購入にも一定額を割り当てる予定である。
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