研究課題/領域番号 |
18K01981
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
長瀬 修 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 教授 (60345139)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 人権 / 障害者 / 差別 / 東アジア / 国際協力 / アクセシビリティ / 自立生活運動 / 障害者権利条約 |
研究実績の概要 |
障害者権利条約の国際的モニタリングを行う障害者権利委員会は、コロナ禍をはじめとする緊急事態下を含む、障害者の脱施設化を重要な課題として取り上げ、当該研究期間中にアジア太平洋各地域でのオンライン協議をふまえ、脱施設化のガイドラインのアウトラインを公表した。 脱施設化は障害者権利条約の第18条の重要な課題であり、本研究として取り組みを進めた。その一環として障害者の地域での自立生活をテーマとして2022年2月26日、27日に東アジアを対象とする障害学国際セミナー2022(ZOOM)を開催した。自立生活運動、家族、リプロダクティブライツとセクシャリティ、精神障害者をテーマとする4つのセッションを設け、参加の日韓中台それぞれからの報告を得た。主催は研究代表者が所属する立命館大学生存学研究所であり、本研究以外の他の共催団体は、韓国障害学会、台湾障害学会、東湖社会発展研究所(中国のNPO)、障害学会(日本:研究代表者は理事として新設された国際委員会の初代委員長に2021年に就任)である。日本語、韓国語、中国語の同時通訳の他、手話・文字通訳も提供した。同セミナーの共同議長である研究代表者は全体のオーガナイザーの他、両日の総合司会も務めた。 引き続き国際的な報告にも積極的に取り組んだ。4月には犯罪、犯罪化、不正義に関する国際ワークショップ(英国)、8月には障害者組織を対象とする障害者権利条約のパラレルレポートに関するワークショップ(韓国)、12月には、障害法と政策ワークショップ(中国)、3月にはフランスの国立社会科学高等研究院主催(障害学会と生存学研究所が共催)の日仏障害研究セミナーにおいて本研究の成果の一端を国際的に共有した。すべてオンラインである。 コロナの影響で延期となっている障害者権利条約の日本審査に関連する研究も引き続き取り組んだ。ようやく2022年8月から9月に実施予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
東アジアにおける障害者権利条約の実施に関する分析を着実に進めることができたためである。特に国際的なセミナーやワークショップを含め、本研究の成果を国内外で共有できたため。具体的なテーマと報告対象は、①津久井やまゆり園事件:エイブリズム、地域生活、死(英国)、②障害者権利条約と韓国(韓国)、③「国連の障害者権利委員会脱施設化ワーキンググループの取り組みについて」(日本)、④障害者差別解消法と合理的配慮(日本)、⑤津久井やまゆり園事件、地域生活、障害者権利条約(中国)、⑥障害者権利条約を通じた日本の障害者政策の転換の課題:社会権から自由権へ(フランス)である。
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今後の研究の推進方策 |
コロナの世界的流行は引き続き、研究対象の東アジアにおける障害者権利条約(以下、条約)の実施と市民社会に深刻な影響を及ぼしている。しかし、そうした環境下でも研究を着実に推進する。なお2020年夏に予定されていた日本の審査は2年の延期後、2022年夏に実施が予定されている。 ①<文献研究>障害学、条約全般、そして特に委員会が新型コロナウイルス感染症の影響を中心的に取り上げている11条(危険な状況及び人道上の緊急事態)を含め、関係する文献研究を継続する。同条に関連しては、2022年2月末のロシア連邦のウクライナ侵攻が障害者にもたらす影響についても検討する。障害者権利委員会が作成する新たな総括所見や、策定中の脱施設化に関するガイドライン並びに一般的意見(第27条:労働及び雇用)も検討する。 ②<研究会の開催>2022年9月の障害学会大会(同志社大学)と関連する形で、日本の初回審査で重要な役割を果たす、ヨナス・ラスカス氏(リトアニアのヴィータウタス・マグヌス大学教授・障害者権利委員会副委員長)を招聘し、条約の実施に関する研究会を開催する。 ③<研究パートナーとの共同分析>引き続きオンラインでの連絡を密にして、継続して分析に取り組む。 ④<障害者権利委員会の傍聴>日本の初回審査、中国(香港、マカオ)と韓国の第2回・第3回統合審査を傍聴するために、コロナの影響を見極めながら、2022年夏のジュネーブの障害者権利委員会に出席し、条約実施の国際的動向を把握し、東アジア各国・地域への影響を把握する。 ⑤<研究成果の論文・書籍での刊行>学会報告や論文、書籍で時宜を得た社会的発信を行う。日本の初回審査については、2022年11月に障害法学会大会にて口頭報告を依頼されているほか、法律文化社から川島聡と石川准と共に編著者として『障害者権利条約の初回審査』(仮題)の企画を2023年の刊行に向けて進めている。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症のパンデミックの影響により、国連障害者権利委員会による障害者権利条約の日本の初回審査が再度、延期となったため。
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