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2019 年度 実施状況報告書

戦後文化運動に見る地方都市の光芒-北九州八幡製鉄所における職場雑誌からの検討

研究課題

研究課題/領域番号 18K02036
研究機関北九州市立大学

研究代表者

西田 心平  北九州市立大学, 基盤教育センター, 教授 (00449547)

研究分担者 川口 隆行  広島大学, 教育学研究科, 准教授 (30512579)
楠田 剛士  宮崎公立大学, 人文学部, 准教授 (20611677)
高山 智樹  北九州市立大学, 文学部, 准教授 (70588433)
研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2023-03-31
キーワード戦後文化運動 / 北九州 / 八幡製鉄所 / 職場雑誌 / サークル誌
研究実績の概要

本研究の目的は、地方産業都市の一つである北九州の戦後の諸相を文化運動の側面から明らかにすることである。北九州工業地帯の中心であった八幡製鉄所(現九州製鉄所八幡地区)に存在していた社員親睦団体「八幡製鉄所親和会」が発行した職場雑誌『製鉄文化』(1949年~2002年)を手がかりに、その中の作品の系譜、および当時の職場内外の他の文化サークル団体との関係性等を検討することが本研究の主な課題である。
その上で本年度の目的は大きく2点であった。一つは2002年までに発行されてきた『製鉄文化』179号分すべての作品を読了すること。もう一つは今後の分析・検討のために、この雑誌の総目次のデータを一覧化することである。
前者の読解作業については、北九州市立大学で同年度3回にわたる研究会(北九州文化運動研究会)を実施し、研究メンバー間で10号分ずつを分担しながら、報告し合うという形式で進めてきた。本年度2回目(8月下旬)の研究会にて、ほぼすべての号数を読了できた。その成果の一つは、雑誌の中で時代ごとに盛衰の波があることを確認できたことである。1950年代から60年代の高度経済成長期まで、70年代から2000年代までとで、発行部数や作品の発表団体数(サークル数)において、増加傾向から減少傾向への変遷が見られた。今後、このような動向を文化運動の系譜や会社における共同性の変遷などと関連させつつ、分析・検討していくことが課題となる。
後者の総目次のデータ化については、情報を一覧化するだけに留まらず、研究会のwebサイトを構築(https://kitakyu-bunka.sakura.ne.jp/)し、そこにPDF化した総目次データを掲載することができた。ただし、雑誌の収集にあたっては数号(106号、108~110号、114~116号)が未入手がとなっている。この点を補完することが引き続きの課題となる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

膨大な号数にのぼる雑誌であったが、上記の欠号分を除くほぼすべての号数の作品を読了できたこと、それらの目次情報をデータ化することによって、今後の詳細な分析・検討の作業に入れる段階に至ったことが大きな理由である。

今後の研究の推進方策

次年度以降の推進方策として重視したいことは、雑誌『製鉄文化』の特徴を、発行された戦後の約50年間にわたる時間軸を中心において検討を進めていくことである。その上で、次年度の目的として大きく2つの点があげられる。
一つは『製鉄文化』の発行元であった「八幡製鉄所親和会」という社員親睦団体の歴史的な系譜および社会的な性格を明らかにすることである。同親和会は1920年代に八幡製鉄所内に設立された工場委員会(労使懇談会)に端を発するものと考えられる。それは、日本的経営の特質である経営家族主義を機能面で支えた一機関でもあった。その親和会の系譜と性格を明らかにすることは、雑誌としての『製鉄文化』の性格を知ることにつながると考えられる。これは作品分析のためのベースとなる作業である。
もう一つは、職場内のサークル団体の動向(結成や衰退、解散等)との関連で『製鉄文化』内の作品や書き手の動向を分析すること、また職場外の他サークル誌の作品との比較を通じて『製鉄文化』の特徴をより明らかにすることである。『製鉄文化』の読解を進めていく中で、会社内のサークル団体「創作研究会」(一時期のリーダーは岩下俊作)の動向が重要な位置を占めていることが見えてきた。また製鉄所内の同一の書き手たちが、職場外の雑誌に『製鉄文化』とは異なる性格の作品を発表していることも浮かび上がってきた。職場内のサークル団体における交流の足跡を確認することや、職場外のサークル誌を読解することを通じて、北九州における文化運動の広がりを確認するとともに、その中で八幡製鉄所という一企業が果たした役割にまで視野を広げていくことが次年度の方向性になると思われる。

次年度使用額が生じた理由

研究会での議論の中で、『製鉄文化』の総目次のデータを冊子化し、解題をつけて発行物として作成する案を検討していたが、数号分の欠号があったため暫定版としてデータをPDF化し、構築した研究会サイトに掲載しておくことにした。そこに要する費用を確保しておくために、文献などの物品代は極力、研究代表者らが所属する大学機関の研究費で支払うことにしたため、物品代の支出額が「0」となってしまった。一方、サイトの構築については、10万円以内ということでかなり支出を抑えることができたため、結果的にその分の残額が生じることになった。また2019年度3回目の研究会を3月末に予定していたが、新型コロナウィルスの影響で研分担者の一人、および研究協力者の一人(計2名)が不参加となったため、その部分に支出される予定であった旅費についても未使用となった。結果的にその分についても2019年度の残額となってしまった。
次年度は、上記感染症の影響が収まる限りにおいて研究会を継続実施してたいと考えていること、また研究分担者をもう一人追加したため、その当該研究者の研究費にも当てながら、いっそう充実した形で活用していきたい。

備考

研究会の成果等を公表するために、年に3回実施している研究会(北九州文化運動研究会)のwebサイトを作成した。現在の情報としては、研究会概要、研究会メンバー、「製鉄文化」目次(暫定版)、問い合わせ先、などとなっている。とくに最初の成果にあたるものは、かつて八幡製鉄所親和会が発行していた職場雑誌『製鉄文化』の総目次である。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2020 2019 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うちオープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] 桐野夏生『だから荒野』における師弟のわけ2020

    • 著者名/発表者名
      楠田剛士
    • 雑誌名

      敍説

      巻: 3-17 ページ: 42-47

  • [雑誌論文] 荒野を描く : テレビドラマ『だから荒野』における炭鉱と原爆2020

    • 著者名/発表者名
      楠田剛士
    • 雑誌名

      層―映像と表現

      巻: 12 ページ: 4-20

    • DOI

      http://doi.org/10.14943/92297

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 青来有一『爆心』の読まれ方2019

    • 著者名/発表者名
      楠田剛士
    • 雑誌名

      原爆文学研究

      巻: 18 ページ: 172-178

  • [学会発表] 青来有一『爆心』の読まれ方2019

    • 著者名/発表者名
      楠田剛士
    • 学会等名
      第59回原爆文学研究会
  • [備考] 北九州文化運動研究会

    • URL

      https://kitakyu-bunka.sakura.ne.jp/

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公開日: 2021-01-27  

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