研究課題/領域番号 |
18K02041
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
飯島 祐介 東海大学, 文化社会学部, 准教授 (60548014)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ハーバーマス / 公共性の構造転換 / 市民的公共性 / シェリング / 世界時代 |
研究実績の概要 |
2018年度は、ユルゲン・ハーバーマスの『公共性の構造転換』(1962年)を構成する、時間・歴史構造を解明した。①「唯物論への移行における弁証法的観念論--神の収縮というシェリングの理念の歴史哲学上の諸帰結」(1963年)においてシェリング『世界時代』のものとして提示された時間・歴史構造を明らかにした。とくに、もうひとつの神(=人類)の自由の濫用による腐敗から、他ならぬそのもうひとつの神(=人類)の再起によって解放されるという構造が析出されていることを明らかにした。そのうえで、②このような時間・歴史構造が『公共性の構造転換』に翻案・援用されていることを明らかにした。とくに、市民的公共性の解体傾向によって存続する支配から他ならぬその市民的公共性の再生によって解放されるという論理によって、『公共性の構造転換』が構造化されていることを明らかにした。さらに、こうした翻案・援用に注目することで、③これまで『公共性の構造転換』に見出されてきた内的な齟齬――市民的公共性の解体傾向を主張しながら同時にその再生に期待すること――が言わば仮象として解消する可能性を明らかにした。 以上の成果を得るにあたって、日本社会学史学会(2018年5月山梨大学)で、その時点での成果をまとめた報告(「初期ハーバーマスのシェリング論における歴史の構造」)を行った。また、2018年度および2019年度以降の研究で必要となる資料の収集を、フランクフルト大学図書館およびドイツ国立図書館(フランクフルト・アム・マイン)で行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記①-③は2018年度に当初予定していた課題であり、それらに着手し一定の成果を出すことができたことから、研究は現在まで順調に進展していると判断する。ただし、次の点から、計画以上に進展しているとは言えないと判断する。(a)2018年度の成果を最終的に学術論文として公表する段階には至っていない点。また、(b)2019年度以降の課題が、当初想定していたよりも複雑であることが判明した点(ただし、計画の変更が必要とは判断していない)。すなわち、2019年度に対象とする『絶対者と歴史――シェリング思想の内的分裂について』(1954年)が、想定よりもハイデガー受容の文脈に強く規定されており、この文脈を厚くフォローすることが必要となった。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は、2018年度で注目した「唯物論への移行における弁証法的観念論--神の収縮というシェリングの理念の歴史哲学上の諸帰結」のシェリング論の生成過程の解明を課題とする。すなわち、『絶対者と歴史――シェリング思想の内的分裂について』(1954年)におけるシェリング論を再構成したうえで、そこからの展開過程として、この生成過程を解明する。その際、カール・ヤスパースのシェリング論など、同時代のコンテクストにも留意する。また、平行して2018年度で明らかとなった諸点を学術論文として公表することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定の文献が在庫切れにより購入できなかったため次年度使用額が生じた。2019年度における文献の購入費用として使用する予定である。
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