ユルゲン・ハーバーマス『公共性の構造転換』(1962年)は、市民的公共性の解体傾向の認識とその再生への期待との相反によって引き裂かれた作品として理解されてきた。本研究は、この矛盾・分裂にも関わらず、それを整合的・統一的に読むことは可能かという問いを設定した。本研究は、同時期のシェリング論を前提にすることで、それが可能であることを明らかにした。ハーバーマスは、もうひとつの神(=人類)の自由の濫用による腐敗から、他ならぬそのもうひとつの神(=人類)の再起によって解放されるという論理を、シェリングに読み取っていた。この論理によって『公共性の構造転換』は構造化されており、上述の矛盾・分裂は解消される。
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