研究課題
本研究の目的は、①独居等で療養生活を支える家族のいない中高年進行がん患者はどのような心理社会的苦痛を経験しているのか、②このような患者が最期まで尊厳を持って安心して暮らしていくためにはどのような心理社会的ケアが必要かを質的・量的調査を通して明らかにすることにある。当該年度は独居進行がん患者20名とその支援関係者18名のインタビュー調査の結果に基づいて作成した独自の調査票を用いて、がん患者400名を対象にインターネット調査を実施した。本調査の実施にあたり、金沢医科大学生命科学・医学系研究倫理審査委員会の承認を得た。調査票にはインタビュー・データから抽出した独居進行がん患者に特有と考えられる社会的苦痛に関する25項目(例:就労・経済的問題、急変時対応、災害時等の緊急時対応、医療へのアクセス、外出・食事等の日常生活上の問題、家族関係)を含めた。また、独居がん患者の精神的苦痛、がんに対する心理的適応、医療・ケアに関するニーズの特徴を明らかにするため、PHQ-9、MACスケール、SCNS-SF34日本語版を使用した。5年以内にがんに罹患した40歳以上の独居者・非独居者各200名から回答データを得た。独居群・非独居群のデータを比較したところ、社会的苦痛25項目のうち、入院時の身元保証問題、家族不在による不利益、治療に関する意思決定、孤立死の心配等を含む8項目について有意差が認められた。一方、海外で開発されたSCNS-SF34で測定した医療・ケアに関するニーズには2群間で有意差が認められなかった。また、独居群は非独居群と比較してPHQ-9のうつ症状スコアが有意に高く、がんに対する闘病意識は有意に低く、無力感が有意に高い傾向が認められた。本研究により、本邦の独居がん患者が経験している心理社会的苦痛や医療・ケアに関するニーズの特徴を明らかにすることができた。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件)
精神療法
巻: 49(4) ページ: 496~500