本研究では、経営学理論(「事業ドメイン」、マルチステークホルダー(MSH)理論)に依拠した上で、1)国内外の文献調査から、近年の公私パートナーシップの進展に伴う政策動向のなかで、社会福祉領域において社会福祉法人が選好されている現状を踏まえた上で、2000年社会福祉基礎構造改革と2016年社会福祉法人制度改革を通して、社会福祉法人のアカウンタビリティが、措置委託関係における主として政府へのアカウンタビリティから拡大して、利用者(家族)、職員、地域社会に拡大してきたことを具体的に考察した。その上で、欧州の協同組合の説明理論であるMSH理論に着目して、社会福祉法人ガバナンスに対する説明理論としての妥当性を検討した。2)次に「事業ドメイン」の定義(物理的定義と機能的定義)と活動方法から導出した公益的活動の類型を理論的仮説を基に、社会福祉法人現状報告書や新聞資料から、活動内容と連携方法(連携先、財源等)を整理して精緻化を図った。連携先としては、社会福祉法人(施設経営法人、社会福祉協議会)、自治体、地域包括支援センター、自治会、老人クラブ、地元学校、ボランティア、保護司会、家庭裁判所、企業等、財源としては、自治体委託金・補助金、赤い羽根福祉基金、寄付や募金、クラウドファンディング等がみられた。3)最後に、困窮者支援に取り組む先駆的事例に着目してインタビュー調査から活動内容を調査すると同時に、組織のSHにいかなるアビリティが果たされているか、公益的活動の前提となるMSH型組織ガバナンスを明らかにした。
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