「子どもの貧困」概念は貧困の原因となる経済格差を生み出す資本主義の経済的メカニズムを分析対象としない弱点がある。日本では、国家が公教育における教育目的・目標・内容を管理する一方、教育費を世帯所得に依存している。このため、子どもの教育機会は世帯所得に依存し、親の低所得は「子どもの貧困」に直結する。新自由主義的国家改造の進展につれて、低・中所得層を中心に子育て・教育費を負担できない世帯が増大し、子育て・ 教育費を世帯収入で負担させる教育費負担構造が機能不全に陥った。政府は「教育の無償化」政策を選択せざるをえなくなったが、これを教育と福祉を権利として保障する政策と評価することはできない。
|