研究課題/領域番号 |
18K02442
|
研究機関 | 鳴門教育大学 |
研究代表者 |
田中 淳一 鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 教授 (00212035)
|
研究分担者 |
高橋 眞琴 鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 教授 (30706966)
牛込 彰彦 帝京平成大学, ヒューマンケア学部, 教授 (80528331)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 重複障害 / 神経回路 / 感覚 / 脳機能活動 / 感覚を生かした活動 / 学習支援 / 環境設定 / 恒常性 |
研究実績の概要 |
重複障害がある人にとって、外界からの様々な情報の感受機構の機能低下は身体の活動や適切な行動を制限するのみならず、身体自体の恒常性にも異常をきたす事になる。今回、身体の水分量を調節に関与する感受機構から水分維持のための行動を引き起こすまでの経路の一部を解明することで、重複障害がある人が生活していくための支援の基礎的知見を得ることにした。体液量の動態を感受し、口渇を生じさせるためには、液性(ホルモンや血漿浸透圧など)および神経性情報が脳内において適切に処理され適度の飲水を行うことが必要である。脳室周囲器官の1つである脳弓下器官(SFO)における血液中のアンギオテンシンII (ANG II) の受容によるSFOニューロンの活動は、血圧、睡眠、体温、性行動に関与している正中視索前核(MnPO)に投射するグルタミン酸(Glu)作動性神経により運ばれ N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)型 および非NMDA(カイニン酸およびキスカル酸)型受容体機構を介して口渇反応が起こることを突き止めた。おそらく、この神経回路は体液量の維持だけではなく、生活をしていく上で重要な働きを担っているものと考られる。(Exp. Brain Res., 2020) 所属研究機関の臨床研究倫理審査委員会で承認を得て、国内事業所においては、感覚を生かした活動を行い、実際に、特に、強度行動障害がある人の脳機能活動の測定を行った。研究成果については、学会発表を行い、広く一般に公開するようにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
重複障害における重要な問題として、認知・記憶の障害があげられる。これらの高次脳機能には、脳内のGlu、γ-アミノ酪酸(GABA), アセチルコリン(ACh) などの神経系が深く関与していることが知られている。そこで、前脳基底部(特にマイネルト基底核)から前頭前皮質へ投射するAChニューロン活動(ACh放出量)に対するGABA作動性神経の役割について検討した結果、ACh放出量はGABAAおよびGABAB受容体を介して抑制的に作用するが、GABAA受容体による抑制が強いことを明らかにした(The 8th Int.Neural Microcit. Conf. Abst. 51, 2020)。英国調査内容は、複数の学会で発表を行った。
|
今後の研究の推進方策 |
第2次英国調査を2019年度末から2020年度当初に実施する予定であったが、新型コロナウイルス感染症検疫の関係で、渡航や入出国が困難な状態となっている。2020年度は、シンポジウム等で広く一般に研究内容を公開する予定にしているが、年度後半に政府や所属研究機関のガイドラインに沿って、研究を進めていく予定にしている。場合によっては、研究期間を延長することも視野に入れている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症検疫の関係で、2020年3月下旬から2020年4月初旬にかけて予定していた英国調査が訪問機関と協議の上、延期となっていることが理由である。今後、政府および所属研究機関のガイドラインに沿って、訪問機関と日程の再調整を行う予定である。
|