本研究の目的は、保育における幼児の音遊びとその援助の実態を明らかにし、そのあり方について領域「環境」と領域「人間関係」の視点から考察することであった。 保育現場における音遊びとその援助の実態については、長期化した新型コロナウィルス感染症蔓延や職場の異動の影響により、実地調査を実施することができなかった。そのため、当初の計画を変更し、(1)保育者養成課程における音遊びを含む表現活動の扱われ方について、主に領域「環境」の観点から分析をおこなった。保育系学会の学会発表を対象として、表現活動における領域間連携の事例をひろいあげてその内容分析をおこない、音遊びを含む表現活動において「総合的指導」がどのように捉えられているかを調べた。令和5年度にはその分析結果について論文の執筆をおこなった。国内の学会誌に投稿予定である。 また、(2)保育における援助を考える際に重要となる「環境」や「環境を通して行う保育」、「主体性」といった概念について、意味の混乱がみられる点に注目し、その要因と解決策について考察した。「環境」概念の混乱の背景には、「環境」に含まれるものの多様さに加えて、「環境」という語が保育における複数の異なる概念で使用されていること、「環境を通して行う保育」の実践上の難しさがあることなど、様々な要因があることを整理した。令和5年度には、日本の保育の「環境を通して行う保育」「遊びを中心とした総合的指導」に関する現状の課題について、とくに「子どもの権利」の観点から整理し、スコットランドで開催されたIPA(international Play Association)世界大会にてその内容を発表した。現在、英文での論文を執筆中である。また、養成課程における「主体性」の概念の捉えられ方について分析をおこない、その結果についての論文執筆を進めた。今後、国内の学会誌に投稿予定である。
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