本研究の目的は,1~3歳児が参加する文化的実践としての家庭での活動に注目し,幼児の数量概念の発達過程を大人の数量支援の構造との関係で縦断的に捉えることである。本研究では特に,子どもの自発的な数量行動に注目し,1歳児 1名を対象に日誌法を用いた3年間の縦断研究を行った。その結果,自発的な数量行動は,家庭における生活全般で観察され,食事場面の場合,食べ物の大小の比較,数え上げ,分配などの行動が,1歳半ばから2歳半ばにかけてみられはじめた。このような発達的変化に対して,大人は子どもの興味・関心に適合する活動の文脈を提供し,子どもの自発的行動のパートナーとなることで数量行動を促す役割を果たしていた。
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