研究課題/領域番号 |
18K02480
|
研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
藤澤 隆史 福井大学, 子どものこころの発達研究センター, 講師 (90434894)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | アロペアレンティング / 社会行動 / 脳画像 / 視線 / ホルモン / 社会的養護 / 養育 / 感受性期 |
研究実績の概要 |
本申請課題では、アロペアレンティング状況が、子の社会性発達および養育者のメンタルヘルスにどのような影響を及ぼすのかについて、以下の3つの課題から検証する。課題①では、学童期の子どもとその親を対象に、行動計測、脳・内分泌計測、遺伝子計測を用いて、子の社会性発達と養育者のメンタルヘルス、母子関係のインタラクションについての評価を行い、過去のアロペアレンティング状況との関連性について、後方視的に検討する。課題②では、乳幼児期の子どもとその親を対象に、既に実施している母子コホートデータを用いて、アロペアレンティング多様性の評価指標を開発し、発達評価データとの関連性について検討する。課題③では、虐待や死別などの理由により社会的養護を受けている子どもを対象に、課題①と同様の手続きを用いて、アロペアレンティング状況と子の社会性発達および養育者のメンタルヘルスの関連性について明らかにする。 当該年度において、まず課題①では、前年度に引き続き学童期の子どもとその親を対象に、行動計測、脳・内分泌計測を行った。現時点までのサンプルから、親子のかかわりの良さに関連する脳機能部位を同定した結果、親では右楔前部において正の関連性、左前頭眼窩皮質において負の関連性が見られた。子では左右の後部中側頭回において負の関連性が見られたが、正の関連性が見られた部位は観察されなかった。今後はこれらの関連性がアロパレンティング状況とどのように関連するのかについて検討する必要がある。課題②では、母子コホートデータに基づき、アロパレンティング多様性について評価するための指標開発を行った。今後は本指標の妥当性と有効性を検証する必要がある。課題③では、社会的養護を受けている乳幼児を対象に視線計測を行った。その結果、社会的養護を受けている乳幼児とそうでない乳幼児では社会的刺激に対する反応性に差があることが明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度において、まず課題①では、前年度に引き続き学童期の子どもとその親を対象に、行動計測、脳・内分泌計測を行い、合計24ペアの行動、脳・内分泌データを得ることができた。現時点までのサンプルから、親子のかかわりの良さに関連する脳機能部位を同定した結果、親では右楔前部において正の関連性、左前頭眼窩皮質において負の関連性が見られた。子では左右の後部中側頭回において負の関連性が見られたが、正の関連性が見られた部位は観察されなかった。今後はこれらの関連性がアロパレンティング状況とどのように関連するのかについて検討する必要がある。 課題②では、母子コホートデータに基づき、アロパレンティング多様性について評価するための指標開発を行った。相関分析の結果に基づき、SEMを用いてアロペアレンティングモデルを構築し、変数間の関連性について検討を行った。現時点までに得られている母子375ペア、調査時点は4ヶ月、10ヶ月、1歳半、3歳の4時点までのデータについて解析した結果、アロパレンティング状況指数は、時点間で有意な関連性が示されていることから、アロパレンティングの多様性は家庭ごとにある程度一貫していることが示唆され、また、アロパレンティング状況が子の社会性発達にもたらす効果では時間的な遅れを伴って影響することが示唆された。今後は本指標の妥当性と有効性を検証する必要がある。 課題③では、社会的養護を受けている乳幼児21名を対象に視線計測を行った。その結果、顔刺激における「目」への注視率、生物的動きにおける正立画において、社会的養護を受けている子どもは受けていない子どもに比べて注視率が低いことが明らかとなった。またこの注視率と子どもの問題行動スコアとの関連を調べたところ、「目」への注視率と相関した一方で、「正立画」との相関は確認されなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
課題①では、引き続き目標サンプル数を達成するために学童期の子どもとその親を対象に、行動計測、脳・内分泌計測、遺伝子計測を実施する。課題②において開発したアロペアレンティング多様性の評価指標を本研究のデータに適用し、親や子の脳機能や親子のかかわり指標との関連性から、アロパレンティング状況と子の社会性発達や親のメンタルヘルスとの関連性について予備的に検討を行う。 課題②では、今年度にコホート調査の最終調査時点である5歳児のデータ取得の大半が終了することからデータ整理を行い、今年度明らかにした3歳児時点までの構造方程式モデリングに5歳児時点のデータを追加し拡張することで、モデルの妥当性と有効性について検証を行う。 最後に課題③では、引き続き社会的養護を受けている乳幼児について参加者数を募りつつ、視線と心理指標の関連性だけでなく、唾液中のホルモン濃度について解析を行い、視線や心理指標との関連性について検証し、社会的養護の状況との関わりを明らかにする必要がある。
|
次年度使用額が生じた理由 |
分子生物学用消耗品に価格変動が生じたため。差額分は次年度の分子生物学用消耗品費に充てる。
|