本研究では調理実習の授業を担当する教師に求められる多面的なスキルの様相を明らかにすることを目的として、実際の授業場面で求められる授業スキルと、授業運営の前提となる実習室の管理スキルについての検討を計画した。 実際の授業場面に関する調査は新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、その間の調査協力者の異動等もあって、今年度も必要な分析データの収集に至らなかった。実習室管理の現状に関する質問紙調査は、当初計画より調査対象地域を拡大して実施した。小学校、中学校ともに調理実習室の管理は児童・生徒の安全のため、衛生的な調理のため、授業を効率よく行うため、学習効果を上げるために必要であると強く認識されていた。調理実習室の管理業務は多岐にわたっており、全体として小学校よりも中学校のほうが各項目の実施率は高く、調理実習室の管理にかかる負担感や困り感も高い結果であった。回収率が20%程度にとどまり地域全体の実態把握のためには限定的な結果ではあるが、調理実習室の老朽化や設備の不足に伴って管理に苦慮していることが伺われた。特に給湯や冷暖房設備がないことが授業の実施計画に影響していたり、ICTを活用した授業に対応できない実態があったりするなど、今日的な水準として施設・設備の見直しが必要であると考えられた。これらの調査結果については先の調査と合わせて3地域の報告書を作成し、学校現場に還元した。
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