研究課題/領域番号 |
18K02538
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
藤瀬 泰司 熊本大学, 大学院教育学研究科, 准教授 (30515599)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 主権者教育 / 中学校社会科 / 高等学校公民科 / 授業開発 / 財政赤字・国債問題 |
研究実績の概要 |
2019年2月9日に兵庫教育大学で開催された社会系教科教育学会第30回研究発表大会において,「主権者教育としての租税・財政学習の授業開発-財政危機学習の構造転換-」という口頭発表を行った。財政学の分野で注目されている租税抵抗の問題を手がかりにすることによって,財政赤字・国債問題を我が国社会が引き起こす財政問題としてではなく,我が国財政が引き起こす社会問題として学習させる中学校公民的分野・高校公民科の授業モデルを開発し,その詳細を発表した。租税抵抗とは,財政規模が小さく人々が自己負担で人間のニーズ(医療や教育など)を満たさなければならない結果,人々の痛税感が高まり増税が難しくなっているという我が国財政による社会的な悪影響である。この悪影響の結果として生じる社会問題として財政赤字・国債問題を教材化することによって,従来とは異なる,新しい財政赤字・国債問題学習の可能性を具体的に示した。 本研究の意義は,我が国財政の公益性を批判的に吟味する主権者の育成方法を具体的に提示したこと。現行の社会科・公民科では,財政の目的や意義・役割を学習させることによって,我が国財政の公益性を無批判に受容する納税者を育成してきた。また,従来の財政危機学習では,財政赤字を我が国社会が引き起こす財政問題として学習させることによって,我が国財政の健全性を批判的に吟味する財務担当者を育成してきた。本研究では,租税抵抗の問題を教材にすることによって,財政赤字を我が国財政が引き起こす社会問題として学習させ,我が国財政の公益性を批判的に吟味する主権者の育成方法を具体的に明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本科研の研究テーマに関わる先行実践を収集するとともに,それら実践の課題を克服する中学校社会科・高校公民科の授業モデルを開発できたから。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策は次の2点。 1点目は,平成30年度に開発した授業モデルの実験授業を大学の講義で行い精緻化を図った上で,中学校や高等学校で実施しその効果を測定することである。 2点目は,小学校における租税・財政学習の現状を分析し,先行実践を収集し,その課題を克服する授業モデルの作成に向けて文献調査・教材研究を行うこと。
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