今年度については,研究のまとめを行い,最終年度とした。 本研究では,小学校第6学年児童を対象に,主権者教育におけるジェンダー平等の観点から,選挙におけるクオータ制を扱った授業を行った。そして,授業の前後において,児童の女性観の変化について,紙と鉛筆だけで意識測定ができる集団式潜在連想テスト(FUMIEテスト)を用いて測定した。対象は,地方議会における女性議員の割合(研究開始当時)を参考に,割合数高位の東京都,中位の香川県,そして低位の青森県の児童とした。FUMIEテストではどの県においても,授業前の測定では男子児童より女子児童の女性に対する肯定感が相対的に高いことが認められた。そして,授業後の測定では授業前の態度と比較し,肯定的な態度へと改善された結果となった。特に青森県の男子児童については,他都県の男子児童と比較し,中立的な女性観から肯定的なものへと大幅に改善したことが明らかとなった。一方で,都県別の相関関係を認めるだけの有意値を得ることができなかった。今後,対象児童の発達段階を変え研究を進めていくことで,相関関係を明らかとすることが可能となると考える。 さらに,対象の小学校第6学年児童が授業を受けた後,女性観が持続されているのかについても併せて追跡調査を行った。追跡調査は初回授業実施から3年後であり,中学校第3学年生徒62名を対象とした測定である。その結果,男女とも小学生であった頃と同様,女性観は肯定的であり,効果が持続していたことが明らかとなった。つまり,小学校での主権者教育におけるジェンダー平等の授業は,長期にわたる効果があったことが示された。 研究時期がコロナ禍とぶつかり,直接,小学校等へ出向いての測定及び授業は相当困難な時期があったものの,各学校関係者の理解と協力の下,進めることができた。これらの成果については,国内外の学会発表及び論文投稿を行い,明らかとした。
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