研究課題/領域番号 |
18K02625
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
権藤 敦子 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 教授 (70289247)
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研究分担者 |
加藤 富美子 東京音楽大学, 音楽学部, 客員教授 (30185855)
田中 多佳子 京都教育大学, 教育学部, 教授 (70346112)
本多 佐保美 千葉大学, 教育学部, 教授 (90272294)
大田 美郁 小田原短期大学, その他部局等, 助教 (20861644)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 小泉文夫 / 実践開発 / 日本伝統音楽 / 諸外国の音楽 / 民俗音楽文化学習 |
研究実績の概要 |
2020年度は,以下の課題に取り組んだ。 (1)小泉が指摘した民俗的基盤と音楽文化,音楽教育の関係に迫るため,小泉文夫とコダーイの関連をふまえた史的課題を探るとともに,ハンガリーにおける伝統音楽と教育実践の関わりについて,オンラインでの情報収集を行った。 (2)音楽学習理論構築に向け,小泉の音楽教育論との関連を確認し,実践の開発を行った。 (3)カリキュラム開発,授業提案に向けて,小中学校でのアジアの音楽を教材とする実践開発,開発した授業の有効性の検証を行った。具体的には,インドネシアにおける伝統音楽と教育実践の関わりについて,教科書を中心とした文献調査を行うとともに,民族楽器を取り上げた実践の考察を行った。また,北インド古典音楽の教材化に向けて,音階や形式を手掛かりとした即興的な音楽活動を導入した実践開発について,研究を行った。日本の音楽については,替え歌を取り上げた実践開発を行った。これらは,小泉が「体験としての音楽」,「第三の視点」について提唱した視点に基づいた三角点で音楽を捉え、積極的に進めてきたアジアとの音楽交流に結びつく。また,替え歌づくりは小泉のわらべうた観に基づくものであり,子ども自身が自由にうたを作り替えてきた点に着目した実践開発を行っている。即興的な替え歌については,ブータンの歌謡の調査を継続し,アジアの音楽文化を広く捉えている。 (4)授業実践に加えて,多文化音楽研究を現代社会に生かす活動へと展開させる試みにも着手することができ,小泉が積極的に行ったアジアと日本の交流事業を発展させた方向性を確認することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は,日本の伝統音楽や諸外国の音楽を音楽科教育に適切に位置付け,学習理論を構築し,教材の体系化と授業開発の実施,提案を行うことを目的としている。補助事業期間中の研究実施計画で予定していた,①音楽教育史研究から導かれる課題と,音楽科教育の現代的課題を明確にする,②小泉文夫の遺した膨大な業績と記録から音楽観と音楽学習観を抽出するとともに,それぞれの音楽文化の特徴を確認しながら整理する,③既往の授業実践報告,提案を確認し,体系化するとともに,小・中学校の現場と共同で,教材開発,授業開発を行い,音楽文化に根差した学習の原則を明らかにする,④検証授業を実施し授業研究から学習の状況を考察するとともに,実践の提案をする,のうち,①②については,文献調査を中心に進めているが,海外調査,国内調査とも停止せざるを得ない状況である。③④については,学校現場との協力が不可欠であるため,新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から,学校への訪問が制限されたり,音楽活動に制約が生じたりしている状況の中で,研究の進捗がやや停滞している。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる今年度は,音楽教育史研究において明らかにできる点を整理し,授業実践の開発に結びつく小泉文夫の音楽観とその理論について明確にするとともに,小中学校を中心に,日本及びアジアの音楽を取り上げ,実践の提案と検証,開発のまとめを行う。研究の成果物として,理論的研究,実践的研究をまとめた報告書を作成するとともに,検証した実践について,体系的に提案を示した公表を行う予定である。 現段階では,海外での活動のみならず,国内での移動を伴う研究も予定通りに行うことが難しく,学校における音楽授業での活動にも大きな制限がかけられている。そのため,移動を伴う調査や研究会,ソーシャルディスタンスが取りにくくウイルスの感染拡大が危惧される授業実践については,今後の見通しが得られにくい状況が続いている。したがって,フィールドワークによる調査・研究,学校現場における授業研究については,その都度判断をしながら,必要に応じて工夫を行って継続する。他方で,オンラインで可能である調査や,各地から集まるミーティングについては,移動を伴わないためこれまでよりもやりやすく,積極的に行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症拡大の状況下で,海外や,東京,千葉,京都在住の研究分担者との行き来が難しくなったこと,インタビュー等を依頼することができなかったこと,国内外の学会等も対面を避けたり延期となったりしたこと等の原因により,当初予定していた調査や発表を行うことができず,研究会については可能な範囲でオンライン開催としたため,旅費や謝金等を使う機会がなかった。資料の収集をさらに行う必要もあるため,今回生じた次年度使用額を翌年度分の助成金と合わせて,翌年度の調査の充実に充てる予定である。
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