研究課題/領域番号 |
18K02720
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
中本 進一 埼玉大学, 人文社会科学研究科, 教授 (50345443)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 多文化共生 / 元留学生 / グローバル人材 / 異文化受容力 / アイデンティティ / 異文化適応 / 順応 |
研究実績の概要 |
(目的) 本研究では、多文化共生推進を視野に入れ、経済界、特に中小企業からブリッジング人材として期待が大きい東および東南アジア出身の卒業後の留学生を対象に、1) 日本企業への就職を選択した要因、現在の生活状況・心理的変容、および2) 日本定着への意欲・期待、そして将来にむけた計画(子女教育を含む)を追跡調査し、3)他国(留学生政策と多文化共生推進政策において先進的事例であるオーストラリア、ドイツ)における留学生の就職後の追跡調査データと比較分析する。これにより、A)定住する生活住民としての元留学生の個々の内面的変容、B)卒業後の留学生が、定住を決める上で重要視している課題、環境、条件等を明らかにすることを目的にしている。 (2020年度実績) 実際に日本の大学を卒業(修了)し、日本企業へ就職し定住期を迎えた元留学生から入手したデータをもとに論文にまとめ研究成果を発表した。データ分析からは、少なくとも、日本企業へおの就職を選択した理由が、留学というある意味挑戦心を必要とする経験が元になり、さらに上を目指す更なる挑戦心が根底にあったことや、定住を決めるうえで重要視している環境や条件的なもの(具体的には企業におけるメンター的存在)を抽出できた。 また一様に「学生から社会人⇒日本企業文化」という2重の異文化適応過程の中で、就職後3年を過ぎたころから「適応」から「順応」へプロセス的にも変化して言っていることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年度、元留学生(日本の大学を卒業し、そのまま日本の企業に就職した者)へのインタビューを予定していたが、新型コロナウイルス感染拡大を受けてすべてキャンセルせざるを得なくなった。また、予定していたオーストラリアでの追跡調査の実施がかなわなかったことが、主な自己評価の理由である。 しかしながら、2020年度は4月から8月までの間に、調査協力者を確保できたことで、Zoomによるインタビューを実施できた。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画においては、令和2年以降に、国内外の卒業後の留学生の追跡調査データを比較分析することで、 ①これまでのデータを再整理し、国際比較(日本とオーストラリア、ドイツなど)を推進する予定である。 ②本研究最終年度には、卒業後に日本で定住する元留学生、地域自治体の経済団体、多文化共生推進にかかわっているNPO団体等、および留学生指導担当教員などを招いた国際シンポジウム:≪留学生の日本定着度と多文化共生推進≫を開催し、専門家の視点を統合し、より推進力のある多文化共生推進のあり方を示唆することを目標に、本研究における将来的展望と課題を明確化する。 前回の報告の中で、「研究協力者のストーリ形成において、卒業後の就職、それに伴う内面的変容を探り、それを協力者間での比較を行うためには、一定程度の用意された共通項を持つ必要がある。そのためにはダイアログの自由発展を期待するより、半構造化インタビューのほうがデータ収集という意味では効率が良いことが分かった。特に時間が限られている環境となる海外での調査においては、半構造化インタビューを行ったうえで、フォローアップ調査としてメール等によるデータ整理を行いたい。」としたが、やはり半構造化インタビューであっても、調査協力者からはかなり自由な発言を得ることができたので、このデータ収集法は継続する。 次に、今回のコロナ禍が研究環境に与える影響は小さくないと判断している。オンラインによるインタビュー実施により、補完的な研究は可能であり、日本国内に在住する協力者への謝金等の支払いなどはクリアーできたといえる。しかしながら、海外に在住する調査協力者への謝金等の支払いは課題として残る。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は最終年度に当たるため、以下のような予算の使用計画を予定している。 【成果発表等について】国内外の卒業後の留学生の追跡調査データを分析し、定住の要因(内面的変容・外的要因)を論文にまとめる。本研究最終年度には、卒業後に日本で定住する元留学生、地域自治体の経済団体、多文化共生推進にかかわっているNPO 団体等、および留学生指導担当教員などを招いた国際シンポジウム:≪留学生の日本定着度と多文化共生推進≫を開催し、専門家の視点を統合し、より推進力のある多文化共生推進のあり方を示唆することを目標に、本研究における将来的展望と課題を明確化する。⇒調査報告を冊子としてまとめるほか、国際シンポジウムにおいて、留学生2名、地域自治体の経済団体から1名、多文化共生推進にかかわるNPO団体から1団体、他大学からの留学生指導担当教員1名をパネリストとして招聘し、謝金等を支出する予定である。またポスター制作等の雑費の支出も予定している。
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