研究課題/領域番号 |
18K02746
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
岡田 有司 東北大学, 高度教養教育・学生支援機構, 准教授 (10584071)
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研究分担者 |
長友 周悟 東北大学, 高度教養教育・学生支援機構, 講師 (80751081)
榊原 佐和子 東北大学, 高度教養教育・学生支援機構, 特任講師 (00761389)
高橋 真理 東北大学, 高度教養教育・学生支援機構, 助手 (20751069)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 発達障害 / 障害理解教育 / 大学生 / 潜在連合テスト |
研究実績の概要 |
2018年度の研究目的は,発達障害理解教育の教育内容の開発を行うとともに,その効果検証のための調査を試行することであった。 発達障害理解教育の内容については,特別支援教育や障害者差別解消法および代表的な発達障害である自閉症スペクトラム,ADHD,LDの理解と対応についての説明を含めた。また,一方的な説明だけでなく,発達障害の理解と対応に関する課題について学生自身に考えを記述してもらう課題も課すこととした。これらの内容からなる発達障害理解教育を,教養教育科目の中で50名程度の学生に実施した。 また,発達障害理解教育実施前,実施後,一定時間経過後に効果検証のための調査を実施した。調査内容は,発達障害者に対する顕在的な態度を測定するための調査項目と,顕在的な態度について測定する潜在連合テスト(IAT)から構成された。顕在的な態度については,調査実施前から調査実施後にかけて,発達障害に対する否定的な印象が低下し,ポジティブな発達障害者観がもたれるようになることが示された。潜在的な態度については,調査実施前から調査実施後にかけて一時的にネガティブな変化が生じたが,一定時間経過後には調査実施前よりもポジティブな状態に至ることが示唆された。これらの調査結果については,教育心理学会,発達心理学会において発表がなされた。 大学生を対象とした発達障害理解教育は一部の大学で行われているものの,その効果について検証した研究は少ない。また,顕在的な指標だけでなく潜在的な指標も含めて教育効果を検討したものはほとんどないといえる。教育内容・方法については試行段階ではあるが,発達障害理解教育の効果がデータに基づき確認されたことは重要な成果だといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目標通り,発達障害理解教育の内容を開発し,教養教育科目の中で実践することができた。また,効果を検証するための調査も開発・試行し,分析の結果一定の効果があることも確認された。以上のことから本研究はおおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度の発達障害理解教育の内容を見直し,より効果的・効率的な発達障害理解教育のコンテンツを開発する必要がある。その際に,偏見の低減に関するオルポートの接触仮説に関する研究なども踏まえ,コンテンツの内容を見直す。また,開発した教育内容を他の大学教育関係者も利用できるよう,利用しやすい説明のためのスライドや発達障害理解教育の指導案の作成にも着手する。 調査については,顕在指標において先行研究の尺度を作成したが,同様の因子が抽出されない,発達障害に対する多様な認識を捉えきれていないといった課題も残った。そのため,新たな顕在指標の開発・試行を検討する。また,潜在指標についても潜在連合テストのカテゴリーとして「健常者」「発達障害者」「良い」「悪い」の4つのカテゴリーを用いていたが,これらについても見直しを進める。 分析については引き続き発達障害理解教育の効果を検証するための分析を行うとともに,大学生の発達障害理解に関する基礎的な研究の蓄積が薄いことから,大学生の発達障害理解に関する基礎的な研究も併行して進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度は発達障害理解教育を試行したが,調査協力者は50名とそれほど多くなかった。そのため,データ入力に生じる費用と高度な分析を行うための統計ソフトを購入する費用が抑えられ,次年度使用額が生じることとなった。2019年度は調査協力者が大幅に増加する見込みであり,データ入力作業が増加するとともに高度な処理が行える統計ソフトの購入が必要になることから,これらに予算をあてる予定である。
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