統語知識の獲得は吃音の発生および自然回復の重要な要因と考えられてきた。しかし統語知識のどのような側面が吃音の発生と自然回復に本質的に関わっているのかは明らかになっていない。本研究は吃音が発生する前からのデータを含むという点で極めてまれなケース研究である。対象児は典型的な発達を示す日本語話者であった。文産出の指標として動詞と項からなる文に焦点をあてた。この文が急速に増加する時期が吃音の発生時期および高頻度で生じる時期と対応していた。この文が安定して産出される時期に吃音は減少し、消失した。これらの結果からsyntax spurtが吃音の発生および自然回復と密接に関係していることが示唆された。
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