研究課題/領域番号 |
18K02829
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研究機関 | 聖徳大学 |
研究代表者 |
東原 文子 聖徳大学, 児童学部, 教授 (60272150)
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研究分担者 |
北畑 彩子 聖徳大学, 児童学部, 助教 (40779881)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 特別支援教育 / ICT / 学びの連続性 / 心理アセスメント / 教材開発 |
研究実績の概要 |
本研究では,「学びの連続性」を目指す特別支援教育がICT活用をベースに実現できることを,子どもの経年変化,子どもを取り巻くリソース連携,子どもどうしの協働の学びの観点から検証することを目的とする。 研究1では,協働の学びの観点から国語学習のうちの音読学習を捉えた。通常学級の小学校3年生の男女ペア10組を対象として,タブレットを用いたペア学習の前後で,各児童の詩の音読に変化が見られるかを,音声波形分析と,録音した音声を大学生に聞いてもらい印象評定をすることによって検討した。タブレット上で,ペアで話し合いながら,詩の文字の大きさや背景色を変えていく学習の前のプレ音読,学習した結果の画面を見ながらのポスト音読を比較した結果,意味構造に沿った「間(ポーズ)」を取るようになったことがわかった。また,印象評定結果を因子分析したところ,音読の評価因子として3因子が抽出され,「活力」「快適さ」「強さ」と命名した。全児童20名の合成得点平均を分散分析で比較した結果,どの項目群でもプレよりポストにおいて合成得点平均が上がり,特に「活力」の伸びが大きかった。タブレット上の詩の文字の大きさを変えることで,声の大きさや「間」(ポーズ)を取ろうとする工夫が生まれたことと関連する。このペア学習により,もともと各因子の合成得点が低かった児童と高かった児童が組んで学習することで,いずれの児童も得点が上昇したことから,苦手な児童は得意な児童から学び,得意な児童はますます向上するということがわかり,通常の学級における特別支援を含む協働学習の一つのモデルとなり得ると考えられた。 研究2では,通常の学級に在籍する発達障害の傾向のある小学生3名を対象に,認知検査と言語検査を組み合わせることで,教科学習のつまずきへの支援の計画が立てやすくなることが明らかにできた。今後この児童達に認知特性に応じた指導を展開する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度は、今後の研究の準備段階として、対象者の認知特性や学習におけるアセスメント、および、「学びの連続性によって子どもに確かな力がついたことを証明するにはどうしたらよいか」に応える学習成果の評価法の開発を行うことを目指していた。対象者のアセスメントは検査を組み合わせたり、行動観察との関連を調べたりする方法で着実に進めている。学習成果の評価法に関しては、初めて着手した分野として、子どもの音声による表現の評価法を開発することができた。国語でよく用いられる「音読学習」を扱ったため、本成果は国語学習では学年問わず日常的に活用できると考えられる。国語学習の中の1分野における開発に限られてしまったが、これまでに例のない評価法の確立は時間がかかること、研究協力者や協力校の実態に応じて柔軟に実施するために研究開始前には分野を特定していなかったことから、今回の成果は「おおむね順調」と認められると考えた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は引き続き個別心理検査や行動観察により研究参加者の認知特性と学力のアセスメントを行うとともに、特別なニーズのある子どもの特性を考慮したICT教材を開発する。学習成果の評価法の開発も教材開発と同時に行う。 平成30年度は学習成果の評価法開発として、国語でよく見られる「音読」場面を用いたことから、次年度は、国語での他の場面(たとえば、「作文」)や算数においてよく見られる場面(たとえば、算数文章題の内容を図に表す)などにおける評価法を開発する。 平成30年度の研究参加者に引き続き参加が依頼できる場合は、経年変化(個人内の「学びの連続性」)を調べる方法を確立する。ただし、研究協力校の状況によってその内容については柔軟に対応する必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度は研究の開始年度で、研究協力校や研究参加者の確保、教材作成等に時間をかけたため、ビデオ記録の分析のための「映像の文字化」に関する人件費を予定していたが使わなかった。次年度は平成30年度に行えなかった分も合わせて人件費を投じて分析に力を入れるため、年度の早いうちから人件費として使用する。
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