研究課題/領域番号 |
18K03062
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
河崎 美保 静岡大学, 教育学部, 准教授 (70536127)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 教師の学び / 認識論的信念 / コンフリクト / 研修 / 協調学習 / 教員養成 / GPK |
研究実績の概要 |
本研究の目的は学びの変革期における教師の認識論的信念の再構成の要因・プロセスを解明しそれを支援する研修のデザイン原則を提案することである。「いかに教えるか」という教授方法の知識の変容に際して教師個人がもっている認識論的信念が,新しい教え方の背後にある「人はいかに学ぶか」の考え方とコンフリクトを起こす形で顕在化し,乗り越えるべき障壁となることが予測される。どのような認識論的信念が顕在化し,新しい学びの知識とコンフリクトを起こしうるか,またその解消による認識論的信念と教授方法の知識の再構成がどのような要因によって促されるのかを検討し,教師の学びの理論的解明と支援の実践的提案を目指す。 本研究は計画段階においては,特定の自治体の教員に対する悉皆研修,希望研修や学校ごとに行われる校内研修の3つのレベルを視野に入れていた。しかし研修開始以降,悉皆研修や希望研修といった研修の効果は,実施自治体の組織が構成する研究チームが主体となって事業の成果を検証する研究と重なるため,それに対して研究者はその助言者として関わり,本研究の範疇からは除外することが適切であると初年度に修正を行った。 その結果,本研究は,校内研修レベルで実施する調査・研究に焦点化した。また追加して,養成段階の教師,すなわち教員養成学部の学生を対象として,認識論的信念の再構成の要因・プロセスを調査・解明する研究を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は初年度に研究方法の一部変更を行った。今年度はそれに沿った形で進めることができた。 第一には,研修を文脈とした研究では,研究者が個別に関わる校内研修において実施する調査・研究に焦点化して取り組んだ。研究者が通年で校内研修に関わっている学校において,教員を対象として授業観の調査を年度末に行った。調査の項目には,その年度の校内研修内の議論から想定されるいくつかの授業の特徴についての表現を取り上げ,それぞれの特徴を持った授業を生徒がどの程度望んでいると思うかをたずねるものであった。その結果,目指すべき授業の方向性として,一部の教員間でずれがあるのはどのような授業の特徴を巡ってのものであるかや,共通認識となりつつあるものはどのような授業の特徴であるかが示唆された。年度末の校内研修で結果を報告することで次年度の研修の焦点化が行われることになった。 第二には,養成段階の教師,すなわち教員養成学部の学生を対象として,認識論的信念の再構成の要因・プロセスを調査・解明することに取り組んだ。研究者が担当する一般的教育方法に関する知識(general pedagogical knowledge;GPK)を扱う科目において,理想とする授業をたずね学生間で認識のずれのある点から注目すべき素朴概念を同定したり,授業の要素ごとに事前の解釈をたずね,研究に基づくGPKとの比較から教員養成初期段階に持たれる素朴な理解を明らかにした。それを各科目の授業で焦点化し,学習研究の知見に照らして再考することで変容を促す実践とその効果の検証を行った。学生から生まれた疑問や期待される変容の起こりにくかった点に着目して次年度に授業を再設計し改善する予定である。 以上より,本研究は大きくは目的にそった形で進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
「研究の概要」に述べた今年度の成果を踏まえて,次年度は次の三点に取り組む。第一に,校内研修において対象校が調査結果を踏まえてどのような研修に取り組み,それが教員間での授業観の変容につながっていくかを検討する。 第二に,教員養成段階の学部生を対象とした科目において今年度の授業設計を改善し,その効果を検証する。 第三に,以上の研究を一般的な教育方法の知識(GPK)の研究の中に位置づけ論文化し投稿する。
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次年度使用額が生じた理由 |
主な理由は,新型コロナウィルス感染症の影響によりデータ処理作業の依頼に遅れが生じ,授業記録やインタビュー調査の発話書き起こしの人件費・謝金に未使用額が生じたことである。 これについては,次年度に収集したデータの分析に充当することで問題なく執行できると考えられる。
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