研究課題
発達障害学生の支援では、大学の規模により「学生相談」機関が「障害学生支援」の業務を同時に担い、運営すること(統合型)が少なくないが、これらの2つの要素は馴染みにくいといった指摘もある。そこで、「学生相談」の歴史的背景から「障害学生支援」が加わるまでの現状と課題をまとめ、差別解消法の施行以降の発達障害学生への支援のあり方を考察した。その結果、個人の成長や発達に基づいて支援する「学生相談」と生きにくくさせているのは社会側であると考える「障害学生支援」は理念や目的が異なり、馴染みにくさがあることが浮き彫りになった。しかし、差別解消法以降、大学は合理的配慮を実施する必要があるため、これらを組み合わせ、よりよいシステムへ変更する必要性があることがわかった。この研究に関して、今年度、紀要にまとめた。「統合型」運営では、コーディネーターが、大学組織の中で社会モデルに基づく支援の制度化に関与し、大学構成員に対して多元的に働きかけ、組織間連携を強化することで、発達障害学生への支援体制は、支援機関が中心となる体制から、大学組織として全学で支援する体制へ至ることが実践研究で明らかになった。また、コーディネーターの役割として、個別の支援では、先に述べた環境を整備しつつ、全発達障害学生の支援を構成することで、状況に応じて、大学内外の関係者が複数関わり、個人の成長や発達を促し、公平に学ぶ機会を得ることができる多層的支援が可能になったことを事例研究で明かにした。これらの実践研究に関しては、学術誌に投稿をした。その他のコーディネーターの役割として、ピア・サポーターのような間接的支援者を育成していくことが重要であることが、自主シンポジウムの発表より分かった。研究を通して、発達障害学生への支援では、「学生相談」の支援と「障害学生支援」を組み合わせる必要性が実証された。
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名古屋大学大学院 教育発達科学研究科 紀要
巻: 69 ページ: 35-43