研究課題/領域番号 |
18K03158
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研究機関 | 愛知東邦大学 |
研究代表者 |
高柳 伸哉 愛知東邦大学, 人間健康学部, 助教 (20611429)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 発達障害 / 強み / 精神的健康 / 社会適応 |
研究実績の概要 |
2018年度の活動として、本研究の調査対象の中核となる発達障害児者・家族の当事者が所属する会における倫理審査申請と、調査対象者となりうる本人・家族らとの関係構築、地域の子育て機関・小中学校との連携構築を中心に進めた。 本研究の目的である「発達障害児者における強み」について探索するため、国内外の先行研究を調べるとともに、幼児期から児童・青年、成人期まで、発達段階や人生の各ステージにおける個人や社会との関わりも含めて検討することが必要であると考え、発達障害児者本人とその家族へのインタビュー調査に加え、社会的場面で関わる保育士・教師等へのインタビューの追加を検討している。実現への足がかりとして、今年度は地域の保育園・小中学校との連携強化・拡大に取り組んだ。その結果、保育士・教師を対象とした子育て支援・教員研修の実施による地域貢献を提供する一方、協力可能な保育園・学校における調査協力の実施を相談できる関係を構築することができた。2019年度には、発達障害児者・家族に加え、保育士・教師へのインタビュー調査により「発達障害児者における強み」の多面的な探索を進めていきたい。 また、発達障害に関する知見の収集・研究連携においては、従来の連携研究者に加え、他地域の医療・心理等の専門家らとのネットワーク強化を進めることができた。これらは別途の発達障害研究プロジェクトとして進行するが、その過程で得られる知見・研究連携は、本研究の進展にも大きく貢献するものと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の進捗状況について「やや遅れている」としたのは、本来2018年度で実施予定の発達障害児者・家族らへのインタビュー調査が遂行できていないためである。遅れている一つの要因として、先行研究であたった「強み」が性格特性や価値観など、やや抽象的な概念に偏ったことで、精神的健康や社会適応に関連しうる具体的な行動レベルの知見が少なくなってしまったことが挙げられる。本研究は、日本の発達障害児者における強みを探索的に検証する取組みであることから、海外での先行研究を流用するものでは不十分であるため、より広い視野での知見収集に加え、発達障害児者・家族らだけでなく、当事者に関わりうる保育士・教師らの視点からの強み探索を追加することとした。 遅れているもう1つの要因に、研究計画当初の想定以上に、発達障害支援に関する地域や研究者らとの連携が広がり、遂行計画を再編成していることが挙げられる。先述の研究実績の概要で記したように、従来の研究連携地域に加え、保育園・小学校における発達障害理解・支援の研修実施やさらなる研究連携を想定した関係を構築している地域を増やすことができた。また、全国の発達障害研究・支援に携わる専門家とのネットワークを強化することも可能となったことから、これらの研究協力を本研究の向上にも反映することが期待され、研究内容や実施スケジュールの見直しを進めているところである。 進展はやや遅れているものの、上記の理由から、本研究は「発達障害児者における強み」に関して、当初の想定以上に多面的で専門的な視点から検証しうることが可能になったと考えている。今後は、研究に協力していただける発達障害児者・家族や地域の保育士・教師らへの還元ができるように、信頼関係の構築と地域連携も並行して進めながら本研究を遂行していくこととする。
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今後の研究の推進方策 |
上記の実績と進捗状況を踏まえ、本研究の遂行にあたっては以下のことに注力して進める。 1)「強み」に関する多様な先行研究の参照として、発達障害児者における性格特性や価値観、生物学的特徴などの個人要因に加え、社会的集団やチーム活動において発揮される強みなど、精神的健康と社会適応に関連しうる広い視野から先行研究の知見を参照する。 2)調査対象者との信頼関係を基にした、強み要因の探索と健康・生活への影響の検証を可能とする継続的な調査の実施を行う。本研究のインタビュー調査対象となりうるのは、すでに関係づくりを進めている発達障害児者・家族や保育士・教師らとなるため、単発の調査にとどまらず、本研究で検討された強み要因に関する意見交換や、健康・生活への影響の継続的把握調査なども実施可能となりえる。関係づくりが遅れの一要因ともなっているが、むしろ本研究の特徴として研究協力者らにも還元しうる成果につながる継続的調査として計画する。 3)研究成果の社会貢献として、研究知見を活かした保育士・教員研修の試行的開発につなげる。研究計画の拡大にもなった地域の保育士・教員らとの連携を活用し、発達障害理解・支援の知見を地域職員による支援効果の向上につなげるため、保育園や学校で実施可能な研修の検討を、保育士・教師らとの意見交換を進めながら開発していく。なお、この取組は研究協力地域から出されたニーズへの対応ともなっており、実現に向けて該当地域が積極的に関わっているものである。 4)発達障害研究・支援に携わる専門家らとの連携・交流から、最新の発達障害研究を踏まえた本研究の妥当性確認や内容修正を可能とし、よりよい成果が出せるように様々なプロジェクトの知見を連動させていく。これにより、本研究単独の成果だけでなく、将来的には発達障害理解・支援に関する体制整備に資する取組みの一端を担うことが期待される。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究実績の概要、進捗状況に記載したように、本研究の実施の進展の遅れがあったこと、研究連携の拡大から実施計画の再編成を進めていることが要因である。 また、2019年度においてはこれらの使用額を用いて、連携を進めている地域における保育士・教員研修で用いる消耗品等の購入を計画しており、本研究の目的達成に向けた連携の推進と調査の遂行の実現性を高めることに活用する。
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