研究課題/領域番号 |
18K03162
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
北川 恵 甲南大学, 文学部, 教授 (90309360)
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研究分担者 |
安藤 智子 筑波大学, 人間系, 教授 (90461821)
梅村 比丘 広島大学, 教育学研究科, 准教授 (80805325)
中尾 達馬 琉球大学, 教育学部, 准教授 (40380662)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | アタッチメント / 親子関係支援 / ランダム化比較試験 / 「安心感の輪」子育てプログラム / ストレンジ・シチュエーション法 / アタッチメントスクリプト法 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、COS-P(「安心感の輪」子育てプログラム)の効果検証(目的1)を通して、早期介入によるアタッチメント改善のメカニズムについて検討すること(目的2)であった。COS-Pの効果検証は、最もエビデンスの強いランダム化比較試験(Randomized Controlled Trial、以下RCT)によって検証する。 今年度初頭は、RCTの手続きについて、研究代表者と研究分担者(中尾)が、専門的知識を有する者と協議したうえでマニュアルを定めた。それに則って、地域の親子を募集し、インフォームドコンセントを行い、甲南大学で6組、筑波大学で10組の親子を2018年度の対象者とした。プレ・アセスメント(甲南大学5月、筑波大学8月)終了直後に対象者をランダムに割り振った結果、介入群8組(甲南大学3組、筑波大学5組)、統制群8組(甲南大学3組、筑波大学5組)となった。介入群には、2ヶ月間毎週の頻度で全8回からなる「安心感の輪」子育てプログラムを実施した後、全対象者にポスト・アセスメントを実施した(甲南大学8~9月、筑波大学10月)。その後、倫理的配慮のために、統制群に対して同プログラムを提供した。さらに介入群のみを対象に、ポストの半年後にフォローアップ・アセスメントを行う計画であり、甲南大学ではそれを3月に実施した(筑波大学は翌年度5月に実施予定)。プログラムは有資格者によるスーパーバイズを受けて、資格のあるファシリテーターが実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で目指しているランダム化比較試験の手続きを具体化し、その手順に則って実施できたことは確かな進捗状況であると評価できる。世界標準のアタッチメント測定手法であるストレンジ・シチュエーション法を手続き通りに実施できていることに加えて、他の測定方法も適切に施行できている。 介入効果の検証をするにあたり、親自身のアタッチメントの変化を捉えるために用いるアタッチメント・スクリプト法は、開発者による訓練を受けた有資格者による分析が必要であり、すでに研究チームにいた分担者(梅村)に加えて、新たな分担者(工藤)を追加した。さらに、親の応答性の評価については、応募時は質問紙(子どもの苦痛への親の反応)による測定を計画していたが、それに加えて、親の行動から応答性を評価することが望ましく、ストレンジ・シチュエーション法のために撮影した映像を用いて親の行動(Emotional Availability)を評価することが可能とわかったので、EA評価の有資格者(篠原、本島)を分担者として加えた。新たな研究チーム体制での役割分担、および各評価者が他の情報にブラインドで評価を行うための手続きについて協議ができた。 初年度は、親子を最大24組募集する予定であったが、20組の申し込みがあった後、辞退した親子が1組、プレ・アセスメント期間中に体調不良等により都合があわないまま参加不能となった親子が3組いたため、16組となった。対象者を増やすことが課題である一方、プレ・アセスメント参加以降の辞退者がいなかったことはプラスに評価できることである。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度も、計画通りに研究を進める。プレ・アセスメントを甲南大学は5月、筑波大学では8月に実施する。各大学で12組を定員として募集し、プレ・アセスメント終了後にランダムに割り振り、介入群には「安心感の輪」子育てプログラムを実施し、統制群は待ちリストとしておく。その後、ポスト・アセスメントを実施し、統制群に同プログラムを提供する。ポスト・アセスメントは、甲南大学は8~9月、筑波大学では10月に実施する。介入群のみを対象としたフォローアップ・アセスメントは、甲南大学では3月に実施し、筑波大学では翌年度5月の実施を予定している。プログラムは有資格ファシリテーターが、スーパーバイズを受けながら適切に実施する。 アセスメントは標準化された手順に則って実施する。評価は、有資格者がブラインドで行う。ストレンジ・シチュエーション法は、プレとポストが終わった時点で、シャッフルしたものを分類する。その分類が終わってから、フォローアップ・データを分類する。アタッチメント・スクリプト法は、プレ、ポスト、フォローアップ全時点の逐語記録作成後、全時期をシャッフルしたものを評価する。Emotional Availabilityについては、プレ・ポストのみで評価するため、プレ、ポスト終了時にシャッフルしたものを評価する。2019年度中に、2018年度に実施したアセスメントの分析を行える見通しである。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度は、幼児版SSPについての情報収集に研究分担者の梅村が行くための旅費を計画していたが、専門的知識を有するEllen Moss教授と相談した結果、研修会が2020年度にモントリオールで開催される予定とわかったため、本予算を繰り越すことにした。 初年度に実施してみた結果、厳密な実施手順が必要なアセスメントを行うための研究補助者や、プログラム実施中の補助者などの人件費が今後多く必要になってくることが見通せた。さらに、アタッチメント・スクリプト法やEmotional Availabilityの評価のために研究分担者を追加することが望ましいと判断し、これに伴う経費が2019年度以降に必要となる。そのため、それ以外の経費をできるだけ他の研究費で対応することで、2019年度以降の予算額を確保できるように検討した。
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