研究課題/領域番号 |
18K03162
|
研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
北川 恵 甲南大学, 文学部, 教授 (90309360)
|
研究分担者 |
安藤 智子 筑波大学, 人間系, 教授 (90461821)
梅村 比丘 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 准教授 (80805325)
中尾 達馬 琉球大学, 教育学部, 准教授 (40380662)
工藤 晋平 名古屋大学, 学生支援センター, 特任准教授 (70435064)
篠原 郁子 国立教育政策研究所, 生徒指導・進路指導研究センター, 主任研究官 (30512446)
本島 優子 山形大学, 地域教育文化学部, 准教授 (10711294)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | アタッチメント / 親子関係支援 / ランダム化比較試験 / 「安心感の輪」子育てプログラム / ストレンジ・シチュエーション法 / アタッチメントスクリプト法 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、COSP(「安心感の輪」子育てプログラム)の効果検証(目的1)を通して、早期介入によるアタッチメント改善のメカニズムについて検討すること(目的2)であった。効果検証はランダム化比較試験(Randomized Controlled Trial、以下RCT)によって行う。 2018年度に甲南大学と筑波大学で研究を開始し、現時点までに38組の参加者を得た(うち1組はポスト・アセスメント前に辞退)。2020年4月に筑波大学で5組の介入群へのフォローアップ・アセスメントを行ったが、新型コロナウィルス感染拡大の影響により、質問紙のみの実施となった。同様の理由で、2020年度は新たな参加者募集を行うことができなかった。 2021年度も新型コロナウィルス感染拡大が懸念されたため、オンラインでプログラムを行う方法を検討した。プログラム開発元であるThe Circle of Security Internationalと連携し、米国での遠隔ファシリテーション経験に基づいて作成された“Remote Facilitation Decision Matrix”を翻訳した。アセスメントについても、親の応答性(Emotional Availability)を評価するために親子の自由遊び場面を遠隔で撮影する方法を試行した。研究計画を見直し、RCTによる効果研究は、対面でのCOPSが実施可能になるまで中断することにした。その間、遠隔実施によるCOSPの効果を、1群事前事後フォローアップテストデザインで検討する研究を2021年度に開始することにし、倫理審査を受けた。過去に1群事前事後フォローアップテストデザインで行ったCOSP(対面実施)の効果研究について、成果を国際学会誌に発表した。その結果とも比較し、遠隔実施によるCOSPが、対面実施と同様の効果をもたらすかを検討する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルス感染拡大によって対面でのCOSPプログラムの実施やアセスメントが不可になるまでは順調に進展していた。2020年度は参加者募集をできる状況にならなかった。コロナ禍で可能な方法を模索し、遠隔ファシリテーションについての準備を行った。ただし、RCTによる効果研究は厳密さが求められるため、これについては当初の研究計画通り対面での実施が可能になるまで中断することが適当と判断した。新たに遠隔実施によるCOSPの効果研究を計画した。遠隔ではグループ参加者を対面実施より少人数(対面では6~8名、遠隔では3~4名)が適切であるとプログラム開発元(Circle of Security International)が示していたことから、甲南大学と筑波大学の2か所で行っても一年間に得られるサンプル数が小さくなる。そこで、介入前後の比較に加えて、過去に対面実施によるCOSPの効果を1群事前事後フォローアップテストデザインで検討した結果と比較することも併せて行う研究を計画した。比較元となる過去のCOSP効果研究が、国際学会誌に採択されたことは大きな成果であった。コロナ禍では、遠隔ファシリテーションも、支援を必要としている親子に必要とされている方法であり、実施方法が遠隔になってもCOSPに効果があるかを検証すること(目的1)、そして、プレ、ポスト、フォローアップ時のアセスメントによってアタッチメント改善のメカニズムについて検討すること(目的2)、という当初の研究目的に沿って、研究を進展させる予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
2021年度は、遠隔でCOSPを実施し、親子関係の改善効果を検討する(1群事前事後フォローアップテストデザイン)。甲南大学と筑波大学それぞれにおいて、全8回のプログラム参加者を、2期にわたって募集する。各回の定員は4名とする。アセスメントとして、親の応答性(質問紙CTNES、遠隔での観察に基づくEmotional Availability評価)、育児ストレス(質問紙PSI)、抑うつ(質問紙EPDS)、アタッチメント(質問紙ECR、遠隔でのインタビューによるAttachment Script Assessment)、子どもの行動上の問題(質問紙CBCL)を、介入前後と介入終了半年後のフォローアップ時に評価する。今年度末までに、解析計画を議論し、作成する。Emotional AvailabilityおよびAttachment Script Assessmentについては、時期をブラインド化して評価を行う必要があるため、フォローアップ時のアセスメント終了後に分析を行う予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
厳密な実施手順が必要なアセスメントを行うための研究補助者や、プログラム実施中の補助者などの人件費を毎年度多く計上していた。新型コロナウィルス感染拡大の影響を受けてプログラム実施とアセスメントを中断したために、これらの実施を担っていた研究代表者(北川)と分担研究者(安藤)の経費の多くが次年度使用となった。さらに、研究分担者(梅村)が、幼児版のストレンジ・シチュエーション法についての情報収集をカナダで行うための経費を計上していたが、これも新型コロナウィルスの影響を受けてオンラインで行うことになったため、旅費・滞在費等が未使用となった。これらについては、2021年度に遠隔でプログラムとアセスメントを行うための機器等に用いることや、研究期間を延長して当初の予定通り対面でのCOSPの効果研究をRCTで行う際の人件費に使用することを計画している。
|