ホモロジー的ミラー対称性は,シンプレクティック多様体と複素多様体という異なる2つの幾何の上で定まる三角圏の同値性を主張するものである。この一見異なる幾何学の間に対応があることが興味深く,現在でもホモロジー的ミラー対称性が成り立つような様々な例について議論されている。一方で,なぜそれが成り立つか,という問いに関して決定的な結果は今のところ知られていない.現在この問の解決に一番近いと思われるのがSYZトーラス束によるミラー対の構成に基づく議論であるが,この方向性では解決すべき主張の厳密な証明が難しい状況にある.本研究ではこれを複素側がトーリック多様体に限定した場合に解決する方法を提案している.
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