最終年度および補助事業期間全体を通じて、連続型および離散型の確率的変分問題に関する以下の結果を得た。まず、連続型の確率的変分問題については、内向きドリフト項と優線形なハミルトニアンを持つ粘性ハミルトン・ヤコビ方程式の一般化主固有値について考察した。具体的には、一般化主固有値が多項式減衰するポテンシャルの摂動に対してどのように振る舞うのかをドリフト項が有界な場合と非有界な場合に分けて定量的に評価し、前者と後者ではその挙動が大きく異なることを示した。また、それらの結果を用いて確率的変分問題に対する最適軌道の長時間挙動を特徴づけた。特に、一般化主固有値が「プラトー」と呼ばれる平坦な部分を持つかどうかで最適軌道の再帰性と過渡性が判定できることを示した。さらに、より精密な評価式を得ることにより臨界点直上における最適軌道の振る舞いを特定した。 次に、離散型の確率的変分問題については、吸収状態をもつマルコフ決定過程のベルマン方程式について考察し、解の長時間挙動をエルゴード問題の一般化主固有値により特徴づけた。具体定期には、一般化主固有値が正ならば最適性方程式の解はエルゴード問題のある解に収束し、負ならば定常問題の最小解に収束することを示した。また、一般化主固有値が零の場合はベルマン方程式の解が対数オーダーで発散することを示した。さらに、マルコフ決定過程が割引因子を持つ場合の無限期間マルコフ決定過程に対する割引因子消滅極限を考察し、この場合も付随するエルゴード問題の一般化主固有値の正負で挙動が大きく異なることを明らかにした。 上記の成果により、連続型および離散型の確率的変分問題に対する最適軌道の長時間挙動を解析するための汎用性のある方法を提示することができた。
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