凸幾何学や非線形楕円型方程式に関連する変分問題について、研究を推進した。 (1):凸幾何学における重要な未解決問題の一つであるMahler予想は、原点対称な凸体のMahler体積を最小化する問題である。3次元Mahler予想の解決のために用いた手法を整備し、より一般の対称性を持つ凸体のMahler体積を最小化する問題に取り組んだ。直交群O(3)の有限部分群Gを指定し、G対称性を持つ3次元凸体全体でMahler体積を最小化する問題に取り組んだ。7系列と7個あるO(3)の有限部分群全てに対して考察を行い、4系列と1つの例外を除いて、最小値・最小化元を決定することが出来た。また、関連するn次元の問題についても研究を進めた。これは入江博氏(茨城大学)との共同研究である。 (2):ある準線形方程式の正値解の漸近挙動について研究をすすめた。これまで未解決であった、非線形項の増大度がH^1臨界の場合の正値解の漸近挙動について、適当なスケーリングの下で、正値解がTalenti関数に漸近することを明らかにした。これは足達慎二氏(静岡大学)・渡辺達也氏(京都産業大学)との共同研究である。 (3):半線形楕円型方程式で、非線形項がBerestycki-Lions条件を満たす場合、変分法による非自明解の構成が期待され、実際、全空間でポテンシャルが定数や漸近的に定数の場合は非自明解が構成されている。本研究では、十分に大きな有界領域で非自明解が構成出来ることを示した。この結果は、佐藤洋平氏(埼玉大学)との共同研究である。 (4):メトリックグラフ上で、半線形楕円型方程式の特異極限問題を研究した。特に最小エネルギー解の漸近挙動について考察し、最小エネルギー解の集中現象とグラフの形状との関係を明らかにした。この結果は倉田和浩氏(東京都立大学)との共同研究である。さらに、最小エネルギー解とは限らない正値解について、頂点に集中する正値解など、様々な正値解の存在を示した。
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