研究課題/領域番号 |
18K03384
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
藤家 雪朗 立命館大学, 理工学部, 教授 (00238536)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 固有値の分離現象 / 行列シュレディンガー作用素 |
研究実績の概要 |
本研究期間における主な研究は、Marouane Assal (Universidad Catolica)と共同で行った、行列シュレディンガー作用素の固有値の漸近分布の研究である。2つの半古典シュレディンガー作用素を対角部分にもち、非対角部分には半古典パラメータに関して1次のオーダーの小さな相互作用を入れた行列値作用素を考える。2つのシュレディンガー作用素の特性集合がそれぞれ単純閉曲線であって、互いに横断的に交わるとする。この行列値作用素の固有値は、各シュレディンガー作用素の固有値の和集合で近似されることが知られているが、これら特性集合に対称性があって、それぞれの生成する固有値が一致する時、いわゆる分離(スプリッティング)現象が起きることを示した。分離現象は、スカラーの2重井戸を持つシュレディンガー作用素については古くから知られており、分離は半古典パラメータに関して指数的に小さい。それに対し、特性集合が交わる(エネルギー交差)行列シュレディンガー作用素の分離現象においては、分離は半古典パラメータに関して多項式オーダーである。そのオーダーや漸近展開初項の係数は、特性集合の交差点における幾何学的量によって記述できることが明らかになった。この研究成果は、論文としてCommunications in Mathematical Physicsに掲載されている。 一方、半古典解析、超局所解析、WKB解析の基礎から、固有値、量子共鳴のBohr-Sommerfeld量子化条件の導出までを大学院生向けに解説した専門書の執筆に時間を割いた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究機関の一つの課題としていた行列シュレディンガー作用素のエネルギー交差が引き起こす現象として、固有値の分離現象を発見できたことは、研究課題の本質を引き出す結果であると同時に、先行結果のない全く新しい結果である点において、十分大きな成果であると言える。
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今後の研究の推進方策 |
行列シュレディンガー作用素のエネルギー交差が引き起こす現象として、量子共鳴の半古典漸近分布の問題を、これまでの研究期間に行ったAndre Martinez (Univ. Bologna), Takuya Watanabe (Ritsumeikan Univ.) との一連の共同研究を統括的に行う理論の構築を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により、当初計画していた研究集会の開催、海外での国産研究集会への参加などがオンライン開催になった、あるいは参加できなくなったため。
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