研究課題/領域番号 |
18K03429
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研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
東海林 まゆみ 日本女子大学, 理学部, 研究員 (10216161)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 重力表面張力波 / 2層流 / 渦あり流れ / 分岐問題 / 数値シミュレーション / よどみ点 |
研究実績の概要 |
本研究は水の波の分岐問題を数値解析的に研究するものである。具体的には、2層の渦あり流れ(上層と下層の深さ、渦度は相異なる)を考える。この条件下では関係するパラメータが多いため、分岐解の波形や分岐構造が非常に複雑になり、理論だけで解析するのは極めて難しい。現在のところ解を具体的に示した例は、理論的にも数値的にもまだ無い。そこで、まず数値解を具体的に求めたい。そのためには2層流かつよどみ点を持つ場合にも対応できる計算アルゴリズムが必要となる。また数値実験ではパラメータ値の組み合わせ方などで試行錯誤が必要となる、などの難しさを伴う。 初年(昨年)度は用いたアルゴリズムの検証を行い、表面張力波、重力・表面張力波、重力波について様々な計算データを集めた。今年度はそれらの結果を分析し、効果的に数値実験を進める方法を模索しながら更に数値実験を続行した。それにより、よどみ点が現れる条件(深さ、渦度)、現れる場所、などに関していくつかのメカニズムを確認することができた。また、重力・表面張力波の場合には、2次分岐が存在することや、パラメータによって分岐形状が変化する、など興味深い現象を調べることができた。 今後の課題として下記のことが挙げられる。分岐解を追跡する過程で、計算の続行ができない状況にぶつかった。理由は次の2点が考えられる。1点目は、用いたコンピュータの許容量の問題、つまり離散化での分割数不足である。2点目は、さらに追跡すると解の形状が overhanging wave になるため、と考えられる。何故なら、我々が用いたアルゴリズムはこのような overhanging wave には対応していない。したがって2層でよどみ点ありの条件に加えて、このような波形の解を計算可能な新たなアルゴリズムの開発が必要となり、それによって大域的分岐構造が明確になるはずである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の研究目標は、表面張力波、重力・表面張力波、重力波の3種の問題について、2層渦あり流れの分岐構造・分岐解の様子を数値解析的に調べることである。具体的には、表面張力や重力の影響、上層と下層の深さや渦度の比が変わることで解や分岐にどのような影響を与えるか、を調べることである。 当初は2年間で数値実験データを揃え3年目(来年度)に結果をまとめる、という計画だった。しかし前述の概要で述べたように、現在までにある程度目標とする結果が得られている。3種の問題の解の比較もできた。残す課題としては、新たなアルゴリズムの構築が必要であり、解決するには時間を要すると思われる。以上のことから、先ずここまでの成果を論文としてまとめておくべきであろうと考え、既にその作業に取りかかっている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は今後の課題、つまり張り出した部分を持つ形状の波(overhanging wave)にも対応できるアルゴリズムを構築するための調査・研究に充てる。1層の場合に overhanging wave を計算するアルゴリズムはいくつか知られているが、そのままでは2層の問題に適用できるものではない。関連する文献を調べ、新しい手法の開拓あるいは現存する手法を適用する方策、などの可能性を探求したい。
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