本研究は水の波の分岐問題を数値解析的に研究するものである。具体的には、2層の渦あり流れ(上層と下層の深さ、渦度が相異なる)を考える。この条件下では関係するパラメータが多いため、分岐解の形状や分岐構造が非常に複雑になり、理論だけで解析するのは極めて難しい。現在のところ解を具体的に示した例は、理論的にも数値的にもまだ無い。 そこで下記のような計画のもと組織的な数値計算を行った。まず2層がともに表面張力波の場合、重力・表面張力波の場合、重力波の場合、の3通りについて様々な条件のもと数値解を具体的に求める。渦あり流れの計算では、よどみ点がある場合にも計算できるアルゴリズムを用いることが重要となる。 初年度には、まずアルゴリズムの構築と検証を行った。そして表面張力波と、重力・表面張力波について数値シミュレーションを行い、結果の整理・検討を行った。次年度は同様にして、2層が重力波の場合についても数値シミュレーションを行い表面張力が働く場合との違いを調べた。結果、よどみ点出現の条件(2層の流体深さの比や渦度)、よどみ点が現れる場所、などに関して様々なメカニズムを調べることができた。なお重力・表面張力波の場合には、2次分岐、3次分岐が存在することや、パラメータの違いでどのように分岐形状が変化するかなど興味深い現象を知ることができた。 以上により、当初の研究目標はほぼ達成できたと考える。最終年度はそれらの研究成果を投稿論文としてまとめ、国際会議で成果発表をすることを目指し、研究をさらに進めるための準備に充てた。投稿論文に関してはレフェリーから適切なアドバイスをもらえたこともあり、順調にアクセプトされた。一方予定していた国際会議での研究発表の方は、(コロナ禍のため)直前になって会議が中止になってしまった。他に手頃な研究集会が見つからず今年度、研究発表の機会を持てずに終えることとなった。
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