量子スピン液体は、高温超伝導やトポロジカル秩序との関係、量子コンピューティングへの応用の可能性などが指摘されており、古くから注目を集めてきた。従って、スピン液体を実験的に実現し、その性質を解明することは基礎のみならず応用上の観点からも重要な課題である。本研究ではCaCu3(OH)6Cl2・0.6H2Oを対象とし、スピン液体実現の可能性を探った。結果として、基底状態はスピン液体ではなかったものの、磁気秩序の近傍にスピン液体との関連が期待される短距離秩序状態が実現することを見出した。本研究の知見を基に更なる物質探索や物性評価を進めることで、スピン液体を実現する物質の開発に繋がると期待される。
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