研究課題/領域番号 |
18K03648
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
馬渡 健太郎 大阪大学, 理学研究科, 招へい研究員 (90814096)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ヒッグス粒子 / ヒッグス粒子の崩壊 / ヒッグス粒子の生成 / 素粒子標準理論を超える物理 / 拡張ヒッグス模型 / 精密計算 |
研究実績の概要 |
2012年に欧州素粒子研究機構CERNの大型陽子衝突(LHC)実験で発見された粒子は、どうやら素粒子標準理論が予言するヒッグス粒子らしいということが理論の予言精度ならびに実験精度の向上により徐々に分かってきた。 一方、素粒子が持つ質量の起源、暗黒物質の存在等、標準理論では説明のつかない事実が数多くあることが知られており、我々はこれまでの実験結果と無矛盾なように標準理論を内包しつつこれらの諸問題を解決する「新物理 (標準理論を超える物理)」を探し求めている。 LHC実験で見つかった粒子は標準理論のヒッグス粒子らしいと述べたが、現時点での実験の不定性はまだまだ大きく、標準理論を超える物理を含む可能性が大いにある。将来の高輝度LHC実験、日本で建設が計画されている国際リニアコライダー(ILC)実験ではまさに、ヒッグス粒子の徹底的検証を通して新物理の証拠が観測されることが強く期待されている。 このような状況の中、本研究では今年度、生成されたヒッグス粒子がどのような粒子にどのような割合で遷移していくかという性質を表すヒッグス崩壊幅に着目し、量子効果を通して現れるまだ未発見の重いヒッグス粒子の寄与を探った [Phys. Lett. B 783 (2018) 140]。 またILC実験におけるヒッグス粒子生成、特に光子と共にヒッグス粒子が生成される過程に着目し、いくつかの異なる模型間の比較を通して、新物理の効果が生成確率をどのように変化させるのかを系統的に調べた [Phys. Rev. D 99 (2019) 035023]。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画では、初年度は「有効場理論を用いたデータ解析手法の確立」を目標とした計画であったが、私が所属する大阪大学の研究グループとの共同研究を優先させ、三年目に予定していた「標準理論からのズレのパターンと新物理理論との指紋照合」を目標とした研究を主に行った。 計画の順番は変わったが、国際専門誌において2本の論文を発表、それに基づく学会発表を多数行うことができ、全体としておおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に行った模型を仮定するトップダウン的なアプローチに加えて、今年度はボトムアップ的アプローチである有効場理論を用いたデータ解析にも力を入れていきたい。
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