本研究の基軸である「総合的なダスト形成モデルの構築」に関して、分子形成とダスト形成を整合的に取り扱うダスト形成計算コードを完成させた。前年度までに、酸素よりも炭素の存在量が多い炭素過多の環境における炭素質ダストの形成を計算するダスト形成モデルを完成させたが、酸素過多の環境におけるシリケイトダストの形成も考慮することによりどのようなガス組成下においてもダスト形成計算を実行できるようにした。特に、ダスト形成と分子形成によるガス原子とガス分子の存在量に応じて、ダスト形成過程を律速するガス種であるkey speciesを状況に応じて変化するよう計算コードを改良することにより、酸素過多の環境でもシリケイトを含む多種のダストの形成過程を安定して計算できるようにした。
また、この計算コードに基づいて超新星放出ガスを模倣した環境でテスト計算を行い、問題なく計算が走り妥当な結果が得られた。そこでこの総合的ダスト形成計算コードを使用して、通常の超新星、通常よりも一桁以上爆発のエネルギーが大きい極超新星、爆発のエネルギーが小さい暗い超新星など、様々な球対称超新星爆発モデルにダスト形成計算を実行し、形成されるダストのサイズや量の前駆星質量依存性・爆発のエネルギー依存性を明らかにした。本成果は現在国際論文としてまとめており、計算の結果得られたダスト種や形成量は今後基礎データとして銀河の化学進化計算に組み込み、宇宙初期から現在までの元素の進化および星間ダストの進化を明らかにする上で重要な基盤となる。
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