研究課題/領域番号 |
18K03721
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
中本 泰史 東京工業大学, 理学院, 教授 (60261757)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | コンドリュール / 雷 / 微惑星 / 隕石 |
研究実績の概要 |
本研究は,3つの小課題に分割して研究を進めた:(課題1) 原始太陽系星雲中での雷発生の環境を調べる,(課題2) 雷によって加熱を受けたダスト粒子の温度変化を調べ,コンドリュールが形成され得るかどうかを明らかにする,(課題3) 雷によるコンドリュール形成と原始太陽系星雲中ダストの進化および微惑星形成の関係を明らかにする,である。 課題1に関し,原始太陽系星雲中で起こり得る帯電機構として,岩石微粒子と金属鉄微粒子の衝突による摩擦帯電を考えた。さらに具体的に検討するため,課題3とも関連させ,微惑星内部の固体微粒子の沈殿を考えた。すなわち,微惑星はストリーミング不安定とそれに続く重力不安定により誕生するとする。できたての微惑星はまだ大きく広がっており,その内部のガス中を固体微粒子が沈殿していく。この際,粒子サイズが異なるとガス抵抗が異なり,沈殿速度に違いが生じる。岩石粒子は大きく金属鉄粒子は小さいのでこれらは衝突し,それぞれ正と負に帯電(摩擦帯電)する。各粒子は沈殿を続け,大局的に正負の電荷分離が起こり,電場が生成される。本研究により,この電場は十分に強くなり,水素ガスの絶縁破壊が起こることがわかった。すなわち,固体微粒子が沈殿中の形成間もない微惑星の内部で,雷は発生し得る。 課題2に関しては,雷が発生して電流が流れ高温になったガスからの熱放射と熱伝導により前駆体ダスト粒子が加熱される様子を数値シミュレーションによって調べた。その結果,コンドリュールの加熱・溶融が起こる条件が明らかになった。また,温度の冷却率についても,分析から推定されている値に近い値となる条件がわかった。 以上のように本研究により,重力不安定で誕生した微惑星内部で固体微粒子が沈殿して雷が起こり,コンドリュールが形成されるという従来にない全く新しいコンドリュール形成モデルを得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
まず,研究環境の面で残念な状況があった。すなわち,令和2年度は年度初めから新型コロナウイルスの感染防止策をとることとなったため,直接・間接に様々な影響があり,思うように研究を進めることができなかった。 一方,研究内容そのものに関しては,研究代表者にとってはなじみの薄い部分(雷の発生)があり,その理解とモデル化に少々手こずったため時間がかかった。しかし,曲がりなりにも3つの課題(目標)全てにおいて一定の結果を得ることはできた。これについてはほぼ計画通りと言ってよいと考えている。 しかし,本研究で得られた結果の公表・発表・論文投稿は,当初計画よりも遅れている。これらについては,続く年度以降,早急に行っていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
当初の3つの課題(目標)すべてにおいて一定の結果が得られたので,これらをまとめて総合的な「微惑星形成とコンドリュール形成のモデル」とし,学会や論文などに発表していく予定である。 また一方で,3つの課題(目標)の各部分におけるモデルの精度を向上させ,より信頼性の高い結果を得るための作業にも取り組む。さらには,初期条件や適用条件などをより一般化することを目指し,より広い条件における微惑星形成・コンドリュール形成の可能性を探る。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度は年度初めから新型コロナウイルス感染症の影響で,研究を進める上で,直接・間接にさまざまな支障が生じた。日頃の研究活動や研究会参加等の活動もともに影響を受け,思ったように研究を進めることができなかった。このため,旅費および論文投稿費を中心に予算が残ったので,これらを繰り越し,令和3年度にそれらの作業を進める。
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