研究課題/領域番号 |
18K03852
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
清水 憲一 名城大学, 理工学部, 准教授 (50294434)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 疲労 / 短繊維樹脂複合材料 / X線測定 / 繊維配向 / ウェルド |
研究実績の概要 |
並走流ウェルドが発生するようにピンを設けた金型を使用して射出成形した板厚1mmのウェルド部を有する短繊維GFRPの引張試験,疲労試験を行い,引張特性,疲労特性の検討を行った.得られた結果を以下にまとめる.比較のため,ウェルド部が存在しない板材からも試験片を切出した.その際,負荷方向が射出方向と平行および直交方向となる二種類の試験片を作製した.以下,ウェルド試験片をWD材と称し,切出し箇所がピンに近い順にWD1,WD2,WD3とする.また,ウェルド部を持たない試験片で負荷方向が射出方向と平行な試験片をMD材,直交する試験片をTD材とする. (1)WD1材,WD2材,WD3材それぞれの引張強さは大きな違いはなかった.しかしWD1試験片のみが最も小さい変位で破断した.これは樹脂注入時のフローフロント会合角が最も大きく樹脂流動が不連続であったことが原因であると考えられる.またTD材と比較するとWD試験片の方がヤング率,引張強さが低いことがわかった. (2)WD1材,WD2材,WD3材すべての試験片で疲労強度はTD材よりも低くなった.これはWD試験片が三層構造でないことが原因であると考えられる. (3)WD3材,WD2材,WD1材の順に疲労強度が高い結果が得られた.破面観察によってピン側に疲労破面が見られ,ピンから遠い場所では急速破面が見られたため,ピンに近い試験片ほど疲労強度が低いことが考えられる. (4)引張負荷条件下でX線測定した結果,MD材,TD材と比較して,WD材はPPS相のひずみが生じにくいことがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)MD材,TD材,WD材の疲労試験を行い,S-N線図を得ることができた.ただし,長寿命域のデータ数が少ないので,さらに増やして信頼を向上させる必要がある. (2)負荷条件下で,母相(PPS相)のX線測定を行うことができた.また,測定されたひずみおよび応力の精度も十分高く,今後,シミュレーション結果との比較・検討が期待できる.
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今後の研究の推進方策 |
(1)疲労寿命はS-N線図で評価できることがわかったので,今後,MD材,TD材,WD材の疲労き裂進展試験を行い,き裂発生寿命とき裂進展寿命の比率を調べる. (2)短繊維樹脂強化複合材料の疲労初期に,母相の格子面間隔が急激に減少する理由を解明するために,PPS単体の試験片しと比較しながらX線測定を行う.
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