研究課題/領域番号 |
18K03874
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
茨木 創一 広島大学, 工学研究科, 教授 (80335190)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 産業用ロボット / 運動精度測定 / レーザトラッカ / 誤差補正 / 幾何学モデル |
研究実績の概要 |
産業用ロボットの位置決め精度を高めることができれば,例えば工作機械と同じように,コンピュータモデルだけを用いてプログラミングできるようになり,その活用範囲はさらに広がると考える.2018年度には,「オープンループレーザトラッカ測定」と呼ぶ,ロボットの位置決め精度を測定する新しい測定法を提案し,スカラ型ロボットを対象として,その試験を行った.ロボットの幾何学モデルに関する過去の研究は多いが,それらのほとんどすべては,リンク長の誤差,各関節の初期角度の誤差だけを含んだモデルを基礎としてる.それに対し,本研究の最も重要な貢献は,各関節の角度位置決め偏差を「誤差マップ」の形で表現し,それを基礎とした新しい幾何学モデルを提案した点である.2019年度は,提案法により同定した幾何学モデルを使って,スカラ型ロボットの位置決め誤差の補正を行い,その効果をレーザトラッカによる測定で検証した. 研究のなかで,気温の変化などによるロボット機構の熱変形が,位置決め精度に大きな影響を及ぼす場合があることが分かった.2019年度は,寸法が予めキャリブレーションされているアーティファクトを利用して,ロボットの熱変形を推定し,その影響を補正する方法を試験した. さらに,より一般的に用いられる,6自由度ロボットに提案法を拡張する研究を開始した.6自由度ロボットは6つの関節を持ち,3次元空間内で位置決めすることできる.幾何学モデルは多くのパラメータを含むが,スカラ型ロボットの場合と同様の考え方を拡張して,各軸の角度位置決め偏差を「誤差マップ」の形で同定し,モデルを構築した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究で提案した「精緻な」幾何学モデルの同定法と,それに基づく補正によって,スカラ型ロボットの位置決め精度を大きく向上できることを,実験で確認できた.さらに,スカラ型ロボットによる2次元平面内での位置決めにとどまらず,6自由度ロボットを使った3次元空間内での位置決めに対しても,提案法によって「精緻な」幾何学モデルが構築できることを確かめた.スカラ型ロボットによる検証は,提案の方の原理的な有効性を調べることを目的としており,最終的な目的は6自由度ロボットへの適用である.当初の目標以上のスピードで,6自由度ロボットへの理論展開と,その有効性の実験による検証が進んでいると考える.
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今後の研究の推進方策 |
スカラ型ロボットに関しては,提案法による位置決め精度の向上を,レーザトラッカ測定だけでなく,実際的なロボット作業の改善につながることを確認する予定である.たとえば,タッチプローブをロボット手先につけ,対象物の形状精度の測定をロボットで行うとき,提案した誤差補正によって,測定精度の大きな向上につながることを示すことを目標とする. さらに,6自由度ロボットへの適用に関する研究を継続する.6自由度ロボットの場合,自重などが原因で,ある軸の運動誤差が,別の軸の角度によって変動するような,軸相互の精度の干渉があると予想している.それらの要因も考慮し,さらにモデルの予測精度の向上を行い,6自由度ロボットの位置決め精度の大幅な改善を目指す.
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