現在の産業用ロボットの多くは「ティーチング」,すなわち人間による操作をコピーすることでプログラムされる.しかし近い将来には,バーチャルモデルによるプログラミングに移行すると予想する.そのとき,ロボット作業の精度は,ロボットの空間精度,すなわち可動領域内の任意の点における,指令位置に対する実際の位置の精度が決めることになる.本研究では,可動領域全体で,ロボットの空間誤差を正確に予測するための,新しい幾何学モデルを提案し,空間精度を大きく改善するための補正方法を構築することを目的とする. 2019年度までは主に,スカラ型ロボットによる2次元位置決めを対象として,本研究で提案した「精緻な」幾何学モデルの同定法と補正法の,原理的な有効性を検証してきた. 2020年度は,提案法を6軸ロボットによる3次元空間内での位置決めに拡張した.6軸ロボットはスカラ型に比べ,幾何学モデルにはより多くのパラメータが必要になるが,スカラ型ロボットの場合と同様の考え方を拡張して,各軸の角度位置決め偏差を「誤差マップ」の形で同定し,モデルを構築する方法論を確立した.また,6軸ロボットの場合,自重などが原因で,ある軸の運動誤差が,別の軸の角度によって変動するような,軸相互の精度の干渉があることが分かったので,それらの要因も考慮したモデルを構築した.構築したモデルによる空間誤差の予測精度を実験で調べ,それに基づく空間誤差の補正実験を行った.その結果,可動領域全体で,空間誤差を大きく改善することができることを確かめた.
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