研究課題/領域番号 |
18K04313
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研究機関 | 金沢工業大学 |
研究代表者 |
大嶋 俊一 金沢工業大学, バイオ・化学部, 准教授 (30367453)
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研究分担者 |
山崎 誠志 静岡理工科大学, 理工学部, 教授 (40291760)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | けい酸塩系表面含浸材 / 硫酸劣化 / 硫酸塩劣化 |
研究実績の概要 |
2019年度は、pH1からpH3の条件にて硫酸劣化を行い、透水量試験および中性化深さ試験に及ぼすけい酸ナトリウム系表面含浸材の影響について検討した。表面含浸材を塗布することにより、透水量や中性化深さが抑制される傾向にあり、硫酸劣化速度の抑制に影響を及ぼす可能性を見出した。ただし、劣化条件が激しいと、中性化深さの測定が難しく、傾向が明確に確認できていない。硫酸劣化後の表層には、硫酸イオンが水溶性塩と難溶性塩として存在しており、表面含浸材の塗布の有無により、水溶性塩と難溶性塩の存在割合が異なることを見出し、これが硫酸劣化後の透水抑制等に影響していると考えられる。なお、この結果をセメント・コンクリート論文集に投稿し、採択された。 透水量や中性化深さが抑制された原因として、表層に存在する化学種が影響するとの仮説を立案し、硫酸劣化後の反応生成物として考えられる硫酸塩化合物の存在化学種に着目して、分析を試みたが、劣化後の表面から採取した粉末試料では、粉末試料中に含まれる硫酸による反応生成物が非常に少なく、同定は困難であった。そのため、化学種分析用の試料調製について共同研究者と検討を行い、化学種分析が可能な試料作製法を見出した。 また、硫酸塩劣化に対するけい酸塩系表面含浸材の影響について検討した。10%の硫酸ナトリウム水溶液に一定期間(4週から12週)モルタル試験体を浸漬させ、硫酸劣化を行ったところ、深さ0~2mmの浅い表層部において、表面含浸材の塗布の有無により、硫酸イオンの存在形態に差異が見られた。表層に存在する化学種の詳細な分析は今後の予定であるが、表面含浸材の塗布により、表層に存在する硫酸イオンが難溶性塩として存在することで、透水量が抑制されることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
硫酸劣化については、けい酸塩系表面表面含浸材の影響について検討がおおよそできており、2020年度に化学種分析を行う予定である。なお、圧縮強度試験は行っていないが、劣化後に存在する化学種が表面含浸材の効果に影響していることが示唆されているため、化学種分析を優先すべきと考える。一方、硫酸塩劣化については、初期検討を終えることができており、2020年度はさらなる長期劣化と詳細な分析を行う予定である。したがって、一部研究計画を修正したが、けい酸塩系表面含浸材の効果についておおむね順調に検討できていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
硫酸劣化後の表面に存在する化学種の分析について、試料形状を変更することにより測定の可能性を見出したため、現在測定用試料を作製中である。2020年度は試料ができ次第、共同研究者と協力し、化学種分析を中心に研究を遂行する予定である。また、長期の硫酸塩劣化させた試料における各種分析を予定しており、硫酸塩劣化に対するけい酸塩系表面含浸材の効果について評価する予定である。しかしながら、2020年3月頃から本格化した新型コロナウイルス感染症対策により、新年度の研究開始が遅れているため、必要に応じて、研究項目の優先度の準位付けを行うなどして、効率良く研究を推進する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度はおおむね順調に研究を遂行できたが、2018年度の繰越額が大きかったために、少額の繰り越しが生じた。2020年度は、劣化後の表層に残存する化学種分析を中心に行う予定であるため、共同研究者との打合せ旅費として使用しつつ、効率良く研究を遂行するための消耗品購入を予定している。
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