2020年度は、10%硫酸ナトリウム溶液への浸漬による劣化加速試験を行い、硫酸塩劣化に対するけい酸塩系表面含浸材の塗布効果について検討を行った。劣化加速試験後の試験項目として、表面の状態観察、透水量試験、中性化深さ試験、硫酸イオン侵入量測定、蛍光X線分析によるCa/Si比の測定を行った。 浸漬期間が12週の場合、表面含浸材の塗布の有無に関わらず、空隙が発生し、36週の浸漬期間では、表面が剥離し、ひび割れが生じるなど、激しい硫酸塩劣化が確認された。透水量試験では、塗布の有無に関わらず、8週以上の浸漬により、硫酸塩劣化が進行し、透水量の増加が確認された。中性化深さ試験では、塗布の有無に関わらず、浸漬期間が長いほど中性化が進行し、12週以上の浸漬期間ではブランクの6倍以上中性化が進行した。硫酸イオンの侵入量測定より、浸漬期間が長いほど、表層における難溶性硫酸塩の割合は低下したが、表面含浸材を塗布することで、表層の難溶性硫酸塩の割合が増加することが確認できた。蛍光X線分析結果より、浸漬期間が長くなるとCa/Si比は減少傾向を示すが、無塗布の場合、36週の浸漬ではCa/Si比の増加が確認できた。 以上のことより、表面含浸材の塗布により、硫酸塩劣化に対する透水抑制効果や中性化抑制効果は期待できないが、浸漬期間4週では、表層の難溶性硫酸塩の割合が維持されることで、硫酸イオンの侵入抑制の可能性が示唆された。一方、36週の浸漬期間では、激しい硫酸塩劣化が確認でき、塗布効果は期待できない。 硫酸劣化後における表面含浸材の透水抑制効果維持の原因を検討するために、1週間硫酸浸漬させた後の表面化学種の分析を行った。表面含浸材を塗布した場合、硫酸浸漬時間と共に二水石膏の生成が確認でき、硫酸劣化後の透水抑制効果は、表層に残存した二水石膏が原因であると考えられる。
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