本研究の目的は,鋼構造骨組の柱梁接合形式の一つである外ダイアフラム形式を対象として,その弾塑性挙動に与える梁偏心と柱軸力の影響を解明し,実用設計式を提案することである. 2020年度は偏心梁付き外ダイア形式柱梁接合部の部分架構試験体を製作し,一定軸力下における繰返し曲げせん断実験を実施した.試験体サイズは前年度と同一とし,実験変数として梁偏心率と柱軸力比を設定し,計4種類の実験結果を取得した.実験では接合部の降伏耐力や塑性化後の挙動に着目し以下の知見を得た.(1)柱軸力が降伏耐力に与える影響は小さく,その影響は偏心率の大きい試験体でも小さかった.(2)塑性化後の局部変形挙動には少なからず柱軸力が影響し,結果として溶接部の破断に至るまでの塑性変形性能に関しては,柱軸力の存在が性能低下につながる.その影響は偏心率が大きいほうが明瞭に現れる傾向がある.(3)(1)の理由として梁が偏心する場合の鋼管の面外剛性の増加によるウェブ曲げ耐力負担率の上昇を前年度の実験で確認したが,本年度の実験においても同様な傾向が確認された. 一方でFEM解析による接合部周辺の応力伝達状況を検証し,偏心率,幅厚比,軸力比等をパラメータとした多数の解析結果から,全体的な傾向として実験同様ウェブの曲げ耐力負担が確認できた.現状ウェブの曲げ負担率を理論的に予測するには至っていないが,影響度の高い偏心率と幅厚比を因子とした回帰分析によりウェブの曲げ負担率予測式を誘導した.この予測式と既往の偏心接合部降伏耐力式を累加する形で曲げ耐力を評価した結果,概ね実験値と対応することが確認された. 本研究の目的である偏心接合部設計用の降伏耐力式を提案したが,軸力比が降伏耐力に与える影響は小さいことが実験的にも解析的にも確認されたので,軸力比は考慮しないこととした.一方で,保有耐力接合設計に関しては実験資料が乏しく,今後の課題とする.
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