最終年度である2022年度もコロナ禍に配慮しながらの研究活動となったが、訪問する時期を調整しつつ復興建築のフィールド調査を実施した。また、本課題の研究成果のまとめとして現地での研究会を開催した。 研究会「近代期における震災復興とまちなみの変遷:北但大震災からの復興と現在」は「日本建築学会農村計画委員会減災集落計画小委員会」の活動と連動して企画し、「農村計画学会災害対応委員会」および豊岡の街並み保存に取り組んでいる「豊岡まち塾」の協力を得て実施した。豊岡市街地や城崎温泉街の巡検と討論会でプログラムを構成し、研究者、行政関係者、学生など合計26名の参加者がみられた。 討論会ではこれまでの研究内容を踏まえつつ、「長期的な視野に立った復興計画」、「災害復興にみられる通時性と共時性の様相」をテーマに設定した。登壇者の報告とパネルディスカッションから、「共同体としての合理性」というキーワードが見いだされたことは復興研究の深化に寄与する成果と受け取れる。研究会の開催は研究成果を地域社会へ還元する機会になったとも捉えており、内容を冊子としてとりまとめて公表する予定である。 研究期間全体を通じて、海外における災害復興事例の調査に関してはCOVID-19の影響で縮小せざるをえなかったものの、目的としていた北但大震災復興建築群の現状と変遷の把握、時間軸を計画要素に加えた復興計画の検討について、知見を蓄積することができたと考えている。また、城崎で実行された地域文脈を継承した復興計画、豊岡市街地でみられる復興遺産を活用したまちづくり活動の動きから、持続的な地域生活空間の計画手法について理解を深めることができた。 なお、本課題での研究活動を通じて新たな共同研究者との交流が得られ、さらに多角的な視点から北但大震災の復興研究に取り組んでいる。今後の展開に向けて、継続して調査研究を遂行していく予定である。
|