これまで豊富な研究蓄積をもつ神社建築史に対して、神社境内を核としながら成立した都市空間と神社に供奉する多様な階層で構成される社家集団の居住形態については不明な点が多かった。それは、近代初頭に伝統的な社家制度が廃止されたために、とくに中下層の社家が廃絶したことの影響が大きい。 したがって、本研究において春日大社社家町を具体的事例として18世紀に遡る社家住宅および町並景観の特質が解明されたことの学術的意義は大きい。また研究成果は、藤間家住宅保存活用にも役立てられており、失われつつある社家の町並景観を継承するために社会的意義も有している。
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