水素は金属を透過しやすいため,金属製の水素容器からの水素漏洩を抑制する機能,いわゆる水素ガスバリア機能の需要が高まっている.本研究では,ヘリウムイオン照射によりステンレス鋼の表面直下に形成される照射欠陥層を利用した水素ガスバリア機能の開発を目的とした.その結果,ヘリウムイオン照射温度が高いほど水素透過が抑制されること,照射温度が高いほどより大きなヘリウム気泡が形成され残留するヘリウムがより強く捕捉されること,などが明らかになった.これらから,高圧のヘリウム気泡がその周囲に作る圧縮場が水素の移動を妨げている可能性が示唆された.
|